2019 Fiscal Year Research-status Report
近世フランスにおけるカルテジアンと修辞学の伝統―ラムスからベルナール・ラミへ―
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19K13136
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保田 静香 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (60774362)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 修辞学 / カルテジアン / 近世フランス / セヴィニエ夫人 / 思想と言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が主に目指すところは、(1)16世紀のラムス主義者と17世紀のデカルトおよびカルテジアン(デカルト主義者)による「文芸」改革の系譜を辿ること、(2)それにより、説得術・弁論術としての古典レトリックが18-19世紀に「文彩・修辞」研究に次第に特化されていった近代修辞学との関連を見極めることである。 現在は、(1)のカルテジアンと呼ばれる人びとの個々の事例を探り出す段階にある。2019年度はとりわけ、17世紀フランスの書簡文学を代表するセヴィニエ夫人『書簡集』の分析にあてた。セヴィニエ夫人の実娘であるグリニャン夫人が熱烈なデカルト主義者で、セヴィニエ夫人自身が『書簡集』のなかで頻繁にデカルトに言及しているためである。セヴィニエ夫人が娘に宛てた膨大な数の手紙のなかで、デカルト哲学とそれを信奉する娘の思想が、自分の思想傾向とはほとんど正反対のものであることを自覚しながらも、それらと正面から向き合うことで、セヴィニエ夫人の文章自体が変幻自在に姿を変え、更新されていくさまを描き出した。この研究成果が、論文「セヴィニエ夫人の手紙のなかのデカルト」『Etudes francaises』(早稲田フランス語フランス文学論集、第27号)である。 そのほか、2019年度の当初の計画にあった(a)「1555年のラムス著『弁証術』とその協力者フークランの『修辞学』をラムス主義ダイアグラムの方法に則り図式化する」作業、および(b)「デカルトとラムスにおけるinventioの意味領域を確定するための準備作業はほぼ終えた。7月と2月に実施した1週間のパリ滞在による文献調査は、以上の研究成果をあげるための大きな助けとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に計画していた研究内容に着手し、論文執筆のための材料は十分に出揃った。それ以外に、セヴィニエ夫人の『書簡集』を読み解き、別の側面からデカルト主義者と17世紀当時の文芸状況の関係を確認できたことにより、研究の視座に広がりが出た。当初の計画では男性による著作物のみを検討の対象としていたが、新たに女性のテクストも扱ったことで、近世フランスにおける女性と学問およびその言語のありかたも視野に入り、本研究が今後いっそう豊かなものとなることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年9月に開催予定の「フランス近世の〈知脈〉」研究会(大阪大学)で「デカルトと記憶術―ラムス主義を経由してー」(仮題)で研究発表を行うこととなっている。この発表には、2019年度中に集めた素材や「デカルトとラムスのinventioの意味領域」の問題も含まれるため、当初の研究計画をいっそう進めやすくなる。この研究会の参加者から得たコメント等を踏まえ、論文執筆を行う。その他、本務校の各種研究会での研究報告の機会も大いに活用する。フランス出張も例年どおり年2回実施したいが、実施の可否は国内外のその時どきの状況次第で判断する。
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Causes of Carryover |
常に残額を考慮しながらの支出に努めていたが、自宅(埼玉県)から所属機関(大阪大学)への移動が容易ではなく、細部の帳尻合わせが難しかった。翌年度の物品費や旅費の支出の際に慎重かつ有効に使用したい。
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Research Products
(1 results)