2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Topicalization: toward the Interface between Generative Grammar and Traditional Japanese Linguistics
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19K13158
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
田口 茂樹 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (00528664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生成統語論 / カートグラフィー理論 / 情報構造 / 談話 / 発話行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語の「主題化」の性質を解明することにより、Rizzi、Belleti、Cinque等、ヨーロッパにおける研究者が提唱する談話上・情報上の階層構造の精緻化を進めてきた。最終的にはこの階層構造の本質の解明と言語教育への応用を到達目標としているが、そのためにはまず多言語を通時的かつ共時的に考察する必要がある、という想定の下に研究を継続している。昨年度から新たに展開した点としては、今まで補文標識句の階層構造に主眼を置いて分析が、小動詞句にもある程度当てはまるのではないか、という想定の具体化及び理論化である。特に重要なのが、従来扱われてきた話題やフォーカスなどのAバー特性に加え、格というA特性の認可がカートグラフィー理論でどのように扱われるかという問題に着眼し、両者の相互関係によって主文・補文の非対称性が説明できることを紀要論文として提出した。現在、コロナウイルス感染症による渡航制限が緩和されつつあることを踏まえ、研究成果を本格的に世界へ向けて発信していくことを目指している。昨年度に引き続き国内の専門家による協力・支援を最大限に活かし、まずは国内での研究成果発表によって研究の基盤固めを行う。前述の紀要論文に加筆・修正を行い、英語論文として電子媒体で公開できるよう、国際ジャーナルへの投稿準備を進めている。カートグラフィー理論を基にした研究が成熟を迎えてきた昨今、日本語のように話者の心的態度が終助詞として具現される言語の研究は極めて重要かつ興味深いテーマであると言える。伝統的な国語学・日本語学における優れた知見は日本国内でしか認知されていないが、これらを言語学界全体に周知することで、申請者を含め世界中の研究者がそれらを応用した研究を推進することに寄与できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に今年度は、カートグラフィー理論の成熟によって様々な研究成果が発表されたが、それらを入手してデータの収集及び批判的な考察できたことは、世界レベルでの研究動向を把握する上で非常に有益であった。コロナウイルス感染症の影響で国際的な研究発表はできなかったものの、本研究を紀要論文として発表できた点、また、これと関連した申請者の研究成果が国際学会で引用・紹介された点等を考慮すると、ある程度の成果が出せたものと認識している。特に上述の紀要論文では、主文で可能な統語操作がなぜ補文では不可能なのか、また逆に、補文においては義務的な格標示が、主文ではなぜ許されないか、という問題に対して妥当な説明ができたと考えている。この分析は独自の着眼点に基づいており、妥当性の立証が実現すれば、カートグラフィー理論全体に対して大いに貢献することが期待される。上述の通り、現時点での研究成果を精査し、英語論文として電子媒体で公開できるよう、国際ジャーナルへの投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
多言語を通時的・共時的に考察する必要がある、という課題は2021年度から継続して重視しており、これを追究するために、多言語研究に適した機関で最先端のカートグラフィー理論や生成統語論、及び双方の研究成果や知見にリアルタイムで触れ、そこに所属する研究者たちとの共同研究を一定期間行うことを目指している。
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Causes of Carryover |
研究着手当初より、情報の収集と発信の観点から、大きく分けて、研究に直接関わる費用と、研究成果を発表するための環境整備費の2点を想定してきた。前者に関しては、最先端のカートグラフィー理論や生成統語論、及び双方の研究成果や知見に基づく論考に直接触れて、データの収集及び批判的な考察を行うことを目的としていた。また、後者に関しては、情報分野の著しい成長・発展に対応するために、PCやソフトウェアを初めとする入力・出力用ツールをアップデートすることに充てる予定であった。環境整備に関しては予定通り遂行することができ、その結果論文の執筆・発表につながった。しかしながら、研究に直接関わる費用に関しては、コロナウイルス感染症の影響により大幅な計画変更を余儀なくされた。具体的には、論文に先んじて研究成果が活発に発表されることから、学会への参加に重点を置いてきたにも関わらず、コロナウイルス感染症の収束が思いのほか長引き、その影響で2021年度も学会は国内国外を問わずオンライン開催となったため、旅費の支出が当初の予定よりも著しく減少した。この結果、研究に直接関わる費用に関しては、次年度での使用を見込む状況となっている。
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Research Products
(1 results)