2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13202
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
安本 真弓 山口大学, 人文学部, 准教授 (20636287)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語史 / 形容詞 / 構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語形容詞には、従来「述語となる」「連体修飾語となる」「連用修飾語となる」の三つの構文的機能が備わっていることが指摘されている。そして、あらゆる形容詞が基本的にはこの三つの用法すべてを持つことが可能であり、この三用法を担うことが英語などとは異なる日本語形容詞の特徴であるとされている。 しかしその一方で、先行研究の状況から、現代日本語を中心に、すべての形容詞が実際にこの三用法を備えているのかという点については疑問が残る。特に現代語以外では、日本語形容詞の構文的機能の時代ごとの実態や各時代による差異が見られるのか否かという点について、ほとんど明らかになっていない。そのため、日本語形容詞の構文的機能のあり様とその史的変遷について、今後明らかにする必要があるのではないだろうか。 そこで本研究では、奈良時代から室町時代における、時代ごとの日本語形容詞の構文的機能の実態を明らかにすることを目的とする。これにより、(1)従来ほとんど分かっていない古代語形容詞の構文的機能の実態、(2)時代ごとの形容詞の構文的機能の共通点と相違点、(3)古代語と現代語を比較し、歴史的な変化が見られる場合は各時代の形容詞の特質、(4)形容詞の構文的機能と意味との関係などを明らかにする。最終的には、日本語形容詞の構文的機能について、奈良時代から室町時代までの各時代の特質とその史的変遷、そこからうかがえる構文的機能が異なる要因を明らかにする。 当該年度は二年目であり、前年度に引き続き、各時代の形容詞の収集とその構文的機能の分類を行った。また、古代語の語彙のあり様を明らかにし、さらには、散文と韻文という文体差について本研究でも考慮する必要があるかを確認するための事例研究として、『古今和歌集』の語彙についても検討した。その中で形容詞に関しての考察も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各時代の形容詞の収集とその構文的機能の分類に関して、予想以上に用例数が多く、その整理に思ったよりも時間がかかっている。 また、形容詞の実態についてより具体的に検討し、さらに、散文と韻文という文体差についても考慮する必要があるかを確認するため、今年度は『古今和歌集』に特に注目して検討した。その分さらに上記の形容詞の収集とそれらの構文的機能の分類が遅れている。しかし、『古今和歌集』についての検討は、論文としてまとめることができた。 総合すると、やや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き、奈良時代から室町時代までの形容詞の用例を大量に集め、時代ごとに各語の三用法の有無を検討することによって、どの程度の形容詞が三用法を持っているのか、また三用法を持っていない形容詞が存在する場合どの用法を持っていないのかを時代別に明らかにする。また、構文的機能と意味との関わりについても実証する。
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Causes of Carryover |
当該年度については、コロナ禍のため、データ整理などを行ってもらうためのアルバイトを頼むことができず、人件費・謝金を使用しなかった。また、学会はオンライン参加であり、資料収集のための出張もできなかったため、旅費を使用していない。 そのため、次年度使用のための費用が残ることになったが、次年度に、データ入力や整理等にかかる人件費・謝金に加え、図書や消耗品類等に相当程度の支出がみこまれるため、それにあてることにする。
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Research Products
(1 results)