2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13213
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂井 美日 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 准教授 (00738916)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 準体 / 名詞化 / 方言 / フィールド調査 / 古典 / 文献調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は準体である。研究目的は,方言調査と古典調査を融合し,類型論的観点から準体現象の法則を見出す事である。2019年度の成果は,論文4件,発表4件,受賞1件である。 論文は全て単著で,古典について「上方語と江戸語の準体の変化;2つの変化の相違点と共通点」金澤裕之・矢島正浩『SP盤落語レコードがひらく近代日本語研究』笠間書院2019/9を,方言について「南琉球宮古語における準体の変化に関する考察」日本方言研究会編『方言の研究』5巻ひつじ書房2019/9を執筆した。また準体に関わる格について「熊本市方言の格配列と自動詞分裂」竹内史郎・下地理則編『日本語の格標示と分裂自動詞性』くろしお出版2019/5を執筆した。残り1件は2019年度中に受理され,現在くろしお出版で印刷中である。 発表は全て単独の国際発表である。2019/6/7オックスフォード大学にて ‘Historical Change of Nominalization Construction in Kamigata Japanese’を,2019/7/5にANUの“International Conference on Historical Linguistics 24”で,‘Historical Development of Nominalization Construction in Japanese’を,2019/9/10にハワイ大学で‘Development of nominalizer in Japanese’を,2019/10/5にハワイ大学で,‘Syntax-Semantics Interface on Historical Change of Nominalization Construction in Japanese’を発表した。 受賞は2019/5/21,国立国語研究所第18回所長賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先の【研究実績の概要】に詳述したように,2019年度の成果は,論文4件,発表4件,受賞1件である。これは,当初の交付申請書に記載した研究実施計画を大きく上回る成果であるため,順調に進展していると言える。 一方,調査の面については,COVID-19の流行により,一部見送ったところがある。当初の計画では,琉球1地点(宮古島)、九州2地点(熊本、鹿児島),中国1地点(島根)のフィールド調査をおこなうとしており,前半の宮古島と熊本については調査をおこなえたが,後半の鹿児島と島根については,調査を中断した。前者については,既に成果発表を達成できており,それは当初の計画以上の進展であるが,後者については2020年度以降の課題となる。 中断については適切な対応であったと考える。その理由は当然のことながら,命の安全確保が最優先であるからである。調査で会場に足を運んでもらうことによって,インフォーマントやその周囲の人々を感染リスクにさらすという事態は,必ず避けなければならない。よって,中断は適切である。 上述のように,調査は一部中断になったものの,成果の発信自体は予定を大きく上回るため,「おおむね順調に進展している」の区分にあたると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については,当初の計画から柔軟に変更する必要がある。 先述のように,令和2年度の4月現在においては,COVID-19の流行に歯止めがかかっていない。先述のように,調査で会場に足を運んでもらうことにより,インフォーマントやその周囲の人々を感染リスクにさらすという事態は,必ず避けなければならない。 具体的な対応策としては,当初,調査予定地を3地点としていたところ,可能な範囲のみでおこなう方針に転換する。調査は,COVID-19の流行が落ち着くまで保留とする。調査を再開する場合も,対面調査ではなく,オンラインを活用した遠隔調査を試みる予定である。 インフォーマントの多くがご高齢の方であるため,オンラインの利用することについては課題も多いと予測されるが,インフォーマントのご家族など,パソコンを扱える身近な方々の協力を仰ぎながら進める予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行に伴う感染拡大防止措置のため,予定していたフィールドワーク2件と,学会1件が中止・延期となった。それにより,出張のための旅費と,データの収集と整理のための人件費・謝金を中心に差額が生じた。 2020年度も,COVID-19の研究への影響は生じるものと思われるが,遠隔調査の実施などにより対応をとり,研究を継続する計画である。2019年度分の残額と2020年度分とを合わせた助成金は,遠隔調査の環境を整備することや,データの収集と整理に関わる人件費・謝金にあてる予定である。
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