2019 Fiscal Year Research-status Report
英語俳句に基づくクリエイティブ・ライティングの効果検証 ―書き手の育成に向けて―
Project/Area Number |
19K13259
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
飯田 敦史 群馬大学, 大学教育・学生支援機構, 准教授 (50622122)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語ライティング / 英語俳句 / クリエイティブ・ライティング / 自己表現力 / ジャンル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は2つある.1つ目は,英語の俳句を用いたクリエイティブ・ライティング活動が,どのように書き手の voiceを引き出し,それを表現する力を育成できるかを検証することである.2つ目は,俳句作成によって育成されたvoice を表現する力が別のジャンルにも転移するかどうかを検証することである. この目的を達成するため,本研究は,以下の3つの過程で構成されている.(1) 学習者が俳句の中で voice を表現する際,どのような言語を選択しているかを分類する. (2) 俳句作成活動を経験した学習者にインタビューを行い,俳句作成活動を通してどのような学びがあったのかを解明する.(3) voice を表現する力が別のジャンルにも転移するかを分析し,俳句作成活動の教育効果を検証する.
初年度である令和元年度は,27名の研究参加者を対象に,教室内外でのデータ収集を行った.論証文・英語の俳句・リフレクション・エッセー,および一部の参加者を対象にしたインタビューによる音声データを収集した.本格的なデータ分析は次年度以降に行われる.また,本年度は,一部のライティングのデータを用いて,本研究の2つ目の目的である「別のジャンルへの転移性」を検証した.俳句作成活動前後で行ったプレ・テストとポスト・テストを4つの観点から分析した結果,論証文の説得性(Overall Quality of Writing),流暢性(Written Fluency),語彙多様性(Lexical Diversity)において有意差が見られたものの,統語的複雑さにおいては有意差は見られなかった.このことから,英語による俳句作成活動は,文章レベルでの複雑性の向上には寄与しないものの,ライティングの流暢さ,語彙の多様性,および論証文の質を高める効果があることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究1年目の令和元年度は,本研究に必要なデータの収集期間と位置付けていた.当初は,実験群と統制群を用いた介在研究(intervention study)を予定していたが,教育研究(データ収集)環境に変更が生じたため,研究参加者数を減らし,1グループのみで研究を遂行することにした.研究デザインに変更があったものの,研究参加者からは予定していたすべてのデータを収集することができた.また,本研究の目的の1つでもある「別のジャンルへの転移性」に関しても,国際学会(The 18th Symposium on Second Language Writing)にて発表できたこともあり,「おおむね順調に進展している」と総合的に評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度,研究参加者からデータを収集することができたので,今後はデータの整理をし,分析作業を行う.まず,英語俳句に関しては,研究参加者が作成した作品を用いて,「英語俳句コーパス」を構築し,統計ソフトを用いて日本人英語学習者が作成した英語俳句の言語学的特徴を分析する.また,インタビューを通して収集した音声データに関しては,すべての内容を書き起こし,分析準備が整った時点で,俳句作成を通しての学びの種類やVoiceに関する意識・見解の検出を行う予定である.
次年度は,国際学会にて中間成果報告を行う予定である.国際学会で発表し,専門家からフィードバックや新たな知見を得なることで,より効果的な第二言語ライティング指導法を探っていく.
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Research Products
(5 results)