2019 Fiscal Year Research-status Report
Environmental History in England: Technological Solution and Discursive Conflict in Late-Nineteenth Century Coal Smoke Problem
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19K13319
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
春日 あゆか 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (30792220)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 石炭 / 気候変動 / 煤煙 / 大気汚染 / コークス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、19世紀イングランドの煤煙問題に関して、対策技術の実用性と煤煙対策キャンペーンの戦略の妥当性について検討することを目的としている。従来の研究が煤煙対策キャンペーンの史料や議会史料に大きく依拠して解釈を行ってきたのに対し、本研究はその他の史料も参照し、汚染問題解決が進まない理由をキャンペーン側の戦略など汚染者以外の問題も含めて多角的に検討することを目指している。 一年目には、まず19世紀後半の煤煙対策に関する言説を新聞史料などから収集し、全体の見通しを得た。これに関連して、本研究とは別に、19世紀に注目された完全燃焼などに関係する対策技術だけでなく、コークスやウェールズ石炭のような煤煙対策の選択肢がありえたこと、これらの選択肢がどれだけ現実的だったかということをさらに分析する必要があることが判明した。本研究で、コークスやウェールズ石炭についてさらに調べることが必要だと考え、ダラムのコークス生産と鉄道のコークス使用についてイギリスでの史料調査を2020年3月に計画していた。しかし、コロナの影響で中止し、来年度に持ち越しとした。 研究を進めるうえで、分析視点として、政策と科学の歴史的な関係を整理する必要があると考えるようになった。この場合の政策とは、政府によるものだけでなく、政府外からの社会問題への対策の提言も含んでいる。本研究で煤煙対策技術がどのように評価されたかを考えるうえで重要な視点である。先行研究を整理し、これを研究会「歴史学工房」で発表した。ここで得たコメントから、政策と科学の関係の歴史的な背景の中に、イギリスの煤煙問題を位置づける必要があること、さらに現在の気候変動問題との比較の中で、煤煙問題の特殊性と現在への展望を浮かび上がらせることができるとの着想を得て、気候変動問題発見の経緯を二次文献から整理することに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的を達成するためには、煤煙対策の他の選択肢について調べる必要があると考えるようになり、当初の計画を修正している。計画の修正はあったが、おおむね順調に進展している。ただし、コロナの影響で2020年3月の史料調査を中止しており、必要な史料の収集が行えていない部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、比較対象として気候変動問題発見の経緯を二次文献を用いてさらに分析する。煤煙問題については煤煙対策の選択肢についてコークスとウェールズ石炭についてさらに調査を進めるほか、それと比較した完全燃焼などの技術的対策の実用性について全体的な見通しを得る。また、19世紀終わりから20世紀半ばにかけて、煤煙問題への認識が死亡統計の分析方法と関連しているとの着想を新たに得ているので、ロンドンのスモッグによる死者数と煤煙問題への関心の相関関係についての分析を行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で2020年3月の史料調査を中止したため。 2020年度には、コロナの影響でアルバイトがなくなった学生を雇用して、ロンドンの死亡者数とスモッグの発生との相関関係と、煤煙問題に関する言説について分析を行うことで、次年度使用額を使用する予定。
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Research Products
(2 results)