2021 Fiscal Year Research-status Report
Environmental History in England: Technological Solution and Discursive Conflict in Late-Nineteenth Century Coal Smoke Problem
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19K13319
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
春日 あゆか 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (30792220)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統計 / 環境 / 大気汚染 / 歴史 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、19世紀イングランドの煤煙問題について、対策技術の実用性と煤煙対策キャンペーンの戦略の妥当性について検討することを目的としている。従来の研究が煤煙対策キャンペーンの史料や議会史料に大きく依拠して解釈を行ってきたのに対し、本研究はその他の史料も参照し、汚染問題解決が進まない理由をキャンペーン側の戦略など汚染者以外の問題も含めて多角的に検討することを目指している。 コロナウイルス感染症のためイギリスでの史料調査を行えず、対策技術の実用性についての研究は中断している。その間、現在の状況でも可能な研究として、19世紀終わりから20世紀半ばのスモッグの発生状況と死亡統計の分析の歴史的変遷、これと関連して煤煙が健康に与える影響の認識の変化について研究を行ってきた。その結果、煤煙が健康に与える影響について、全てを死亡統計分析の洗練から説明することはできないものの、統計分析が長期的には影響を与えたと考えられることを明らかにし、「社会問題になる身体」と題した論文を『新しい歴史学のために』で2021年度に発表した。 また、煤煙対策キャンペーンの戦略の妥当性については、煤煙対策に反対した工場経営者らの行動を中心に分析を行うことによって明らかにする研究を行っている。特に活発な反対があったシェフィールドとリヴァプールの事例研究を行い、既存研究では部分的に切り取られるだけの傾向にあった工場経営者側の反対について、1840年代から1860年代半ばの期間について包括的に明らかにすることを試みている。イギリスでの史料調査は行えていないが、新聞データベースの利用と、過去の史料調査で取得した地方自治体の史料を活用することで、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イギリスでの史料調査を行うことができていないため、対策技術が実際にどの程度実用に耐えるものだったか、という点の研究は中断している。しかし、煤煙対策キャンペーンの戦略の妥当性については、入手済みの史料やデータベースを利用して、研究を進展させている。また、前者の研究が行えない代わりに、統計分析と煤煙の健康への影響の認識についての研究を行うことができている。 このように、当初の計画に関しては遅れがみられるものの、コロナウイルス感染症の流行のもとで可能な限りの計画の変更を行って研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度が最終年度だったが、コロナウイルス感染症の影響で延長を申請し、受理された。2022年度については、引き続き煤煙対策キャンペーンの戦略の妥当性についての研究を継続し、可能であればイギリスでの史料調査を実施して、対策技術の実用性についての研究を完成させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、計画していたイギリスでの史料調査を行えていないため。これに伴い研究計画を一部変更している。2022年度は可能であれば、イギリスでの史料調査を行い、中断していた研究を完成させる予定である。
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Research Products
(1 results)