2023 Fiscal Year Annual Research Report
Environmental History in England: Technological Solution and Discursive Conflict in Late-Nineteenth Century Coal Smoke Problem
Project/Area Number |
19K13319
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
春日 あゆか 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (30792220)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 煤煙 / 大気汚染 / イギリス / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新型コロナウイルス感染症のために期間を延長したため2023年度で5年目となった。2023年度には、煤煙対策への反対について煤煙排出の有罪判決数や罰金額の推移とあわせてまとめ、論文として学術雑誌に投稿した。また、19世紀の煤煙対策技術がどの程度現実的な選択肢だったかという問題については、ロンドンの水道会社では19世紀半ばにウェールズ産石炭など燃料を煙の出にくいものにするという選択がなされていたこと、また鉄道会社ではコークス利用が一定程度見られたことを明らかにし、現在これについても発表するために執筆を行っている。 研究期間全体を通しては、1年目に科学技術と政策の関係、2年目に現在の気候変動問題やそれへのバックラッシュ、3年目には統計と政策の関係と、本研究で扱う事例研究をどのような枠組みで解釈するかという問題に取り組んできた。現在の課題である気候変動問題と本研究が対象とする19世紀イギリスの煤煙問題との類似点・相違点を明確化し、特に19世紀イギリスにおける自由主義の影響力やそれに関連した行政の制約の中で、行政による煤煙排出の取り締まり以外の側面からも煤煙対策の効果を判断する必要があると考えるに至った。 煤煙対策への反対について煤煙排出の有罪判決数や罰金額の推移と合わせて考えることで、長期的には煤煙に関する規則違反への罰金額が減少傾向にあり、罰としての意味が薄れていくことを議論した事例研究、ロンドンでの普及に比べて言説にはそれほど反映されていないように思われるウェールズ産石炭の使用やコークスの鉄道での使用の例のように、煤煙対策運動の焦点となっていた煤煙対策設計とは異なる解決策も地域や分野によっては広く使用されていたことを議論する事例研究(現在執筆中)、統計と煤煙の健康被害の認識の事例研究と合わせて、単著としてまとめる作業を行っている。
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