2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13326
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 翔太郎 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (60815679)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近世大名 / 顕彰 / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は秋田藩主佐竹義和を事例として、旧藩士による顕彰事業の実態を分析するとともに、近世史料を用いて義和の実像を解明することを課題としている。本年度は秋田県公文書館を中心に史料調査を進め次のような成果を得た。 ①旧藩士のネットワークと顕彰事業の分析 顕彰事業の中心の一人であった東山多三郎の収集史料である「東山文庫」の調査を秋田県公文書館で行った。特に顕彰事業の母体となった秋田史談会の活動記録等をを収集し、活動時期や秋田師範学校や県内の小学校、中学校の教員により構成されていたことなど基礎的な情報を把握することができた。また町田忠治や井上広居といった旧藩士で秋田県選出の衆議院議員が郷土史家の活動を支援していたこともわかり、今後彼らの活動についても分析する必要があることがわかった。 ②佐竹義和の自筆記録を用いた政治的役割の分析 秋田県公文書館で収集した佐竹義和の政務記録「用向書留」の翻刻、分析を進めた。家中の重臣層と中・下級藩士間の家格争論である「廻座・諸士同席一件」の裁断について、義和と一門・家老による意思決定過程を明らかにし、その成果を論文「19世紀初頭の秋田佐竹家における大名・家臣関係―「廻座・諸士同席一件」を事例に―」として公表した。また義和は官僚制外にあった一門東家当主を重用したが、江戸で部屋住としてあった縁者に東家を相続させるなど、自らの権力基盤として重視していたことを明らかにし、その成果を東北史学会大会日本近世・近代史部会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は未確認史料を収集し、収集史料の翻刻、分析を順調に進めることができた。また学会報告、論文発表により成果を公表することができたので、おおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
顕彰事業の中心の一人であった真崎勇助の収集史料群(大館市立図書館「真崎文庫」、秋田県公文書館「落穂文庫」)の調査は着手できなかったため、その調査を進める。また旧藩士の活動については、本年度の成果をふまえ、学会発表の上、論文化できるように分析を進める。 佐竹義和の「用向書留」の翻刻も引き続き進め、特に文化期の蝦夷地出兵前後の秋田藩政の展開について分析を進める。
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Causes of Carryover |
自然災害の発生により学会に参加できなくなってしまったこと、また感染症の発生により計画していた調査を断念せざるを得なかったため旅費の支出が予定していたよりも少なくなってしまった。次年度(令和2年度)についても感染症の影響により調査が困難となる可能性もあるため、物品費や人件費にあて、収集史料の翻刻、分析作業に努めたい。
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Research Products
(2 results)