2020 Fiscal Year Research-status Report
近世後期出羽国村山郡の大名飛地領に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K13327
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤方 博之 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40727674)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 日本近世史 / 出羽国村山郡 / 飛地領 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非領国地域の出羽国村山郡(現在の山形県東部、山形盆地周辺)に所在した、佐倉藩堀田家の飛地領(46ヵ村、約4.1万石)を分析対象とする。飛地領内の史料を把握・調査する段階から着手し、それら史料の分析を通じて、近世後期の飛地領における地域運営と、堀田家による支配の実相を究明しようとするものである。 2020年度はコロナウイルスの影響で山形市内での調査を見送らざるを得なかったが、既に入手していた史料の分析に注力した。とりわけ佐倉藩飛地領研究のための基礎作業として、飛地領で名主を務めた家に伝わった文書群(會田家文書、山形大学附属博物館寄託)に含まれている「万手扣(よろずてびかえ)」という史料の解読に取り組んだ。同史料は村側のリーダーが職務上作成した手控えであり、飛地領全体の情報が記録されている。年代としては、嘉永2年(1849)前後のものである。解読文の全文に、リーダーの役割など史料の注目点を論じた解説を付して、「佐倉藩出羽飛地領締役の御用留『万手扣』」(『駿台史学』171号、2021年2月)として発表した。 このほか、飛地領の年貢納入のあり方について、皆済目録(ある年の年貢を全て納入したことを証するために、領主から村へ発給される文書)を用いた分析を進め、原稿化に着手した。 また、佐倉藩飛地領をテーマとした講演を行い、研究内容の一端を市民向けに解説する機会を得た(上山城歴史講座「佐倉藩柏倉陣屋の戊辰戦争」、山形県上山市・上山城郷土資料館、2021年3月)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、(ア)調査着手済みの史料群の分析を継続、(イ)未整理文書群の調査に着手、(ウ)前年度より着手している史料紹介原稿を完成させる、という3点を進める計画であった。 (ア)については、前年度より作業を進めていた「万手扣」(會田家文書Ⅰ-2-15、山形大学附属博物館寄託)全文の翻刻を終えた。翻刻文に解説文を添えて『駿台史学』171号の「特集:地域から描く歴史像」に寄稿した。これにより、(ウ)についても計画どおり進捗した。 (イ)については、コロナウイルス感染拡大のため、史料所蔵者の意向もあって調査を見送ることとなった。しかしながら、山形市内の研究協力者との情報交換は継続的に行った。その結果、当初予定していた区有文書1件のほかに、研究協力者よりもう1件の情報が寄せられ、調査可能な文書群が2件となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、調査着手済みの史料群の分析を継続し、飛地領の年貢納入のあり方について考察した論文を執筆する。 未整理文書群については、コロナウイルスの流行状況に留意しつつ、所蔵者の承諾が得られた文書群の調査に着手する。当該調査が困難である場合には、対象を博物館・資料館などの機関で公開されている文書群に切り替えて調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大により、予定していた調査を実施することができなかったため。
|
Research Products
(2 results)