2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒須 友里江 東京大学, 史料編纂所, 助教 (20781438)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 左経記 / 古記録 / 写本 / 平安時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は『左経記』諸写本の調査および分析を進めた。 宮内庁書陵部、東洋文庫、名古屋市鶴舞中央図書館所蔵河村文庫、大阪府立中之島図書館、筑波大学附属図書館、京都大学附属図書館、京都府立京都学・歴彩館、尊経閣文庫に出張し、13写本を調査し、必要に応じて写真撮影した。また、国立公文書館所蔵内閣文庫、東山御文庫、山内文庫、大和文華館の9写本および個人蔵の2写本については、写真帳やインターネット上で公開されている画像の閲覧により調査を行った。 『左経記』諸写本の所在については、『國書聰目録』第三巻(岩波書店、1965年)以降のまとまった情報がなかったが、今回の調査により現在の諸写本の所在をほぼつかむことができ、『國書聰目録』以降に所蔵機関が変更された写本や『國書聰目録』に載っていない写本が存在することが分かった。所蔵機関の都合や時間の不足により未調査の写本もいくつかあるが、これらについては2020年度以降調査を行う予定である。 諸写本については、次の二点が明らかになった。第一点は、写本の構成には主に三つのパターンがあること。①写本に本来付けられた書名(内題)が「糸束記」とされる写本はすべて同じ構成(寛仁元年から万寿三年)である。②内題が「左経記」とされる写本は最も多く現存するが、その大部分は「糸束記」の範囲に長元元年以降を加えたものである。③内題が「経頼卿記」とされるものは宮内庁書陵部所蔵九条家本の四巻のみであるが、この部分は他のいずれの写本にも含まれない。 第二点は、写本によって首書に特徴が見られること。首書の数、色(墨または朱)、合点の有無が写本によって異なり、首書に基づいて諸写本を分類することが可能と考えられる。首書の対照作業にも着手しているものの、2019年度は一部に留まったため2020年度も継続して進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に予定していた『左経記』諸写本の調査については大部分を完了することができた。また、調査と並行して写本の分析・分類も行い、写本の構成や首書の特徴により分類することができるという見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
『左経記』関連の作業を優先的に行い、写本の全容解明を目指す。具体的には、2019年度未調査分の写本の調査を行うとともに首書の対照作業を進める。続いて2020年度に予定している『春記』の調査も開始する。
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Causes of Carryover |
2019年3月に予定していた出張が新型コロナウイルス流行の影響によりキャンセルとなったため、次年度使用額が生じた。この出張については、出張が可能になり次第実行する。
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