2019 Fiscal Year Research-status Report
近世日朝通交システムの「終焉」―対馬藩朝鮮通詞の視点から
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19K13332
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 雅代 名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (30827655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日朝関係 / 釜山 / 対馬 / 通訳官 / 境界領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近世を通じて日朝関係が対馬藩に委ねられていた事実をふまえながら、とりわけ折衝の最前線を支えた通訳官(朝鮮通詞・倭学訳官)に着目し、近世近代移行期における日朝外交システムの変容/継承のあり方を具体的に追究しようとするものである。 外交システムの変容/継承について、今年度はまず19世紀前半の日朝間の外交折衝事案の検討をすすめた。韓国・国史編纂委員会にある対馬藩政史料を主に収集し、日朝交渉の最前線としてあり続けた釜山倭館という場に着目しながら、現実の外交交渉をもとに解析をした。とくに折衝の最前線で日朝双方の意思疎通を担った通訳官の活動を、関連史料のなかに探った。あわせて、ソウル大学校奎章閣および韓国国史編纂委員会などに所蔵される、同時期の朝鮮王朝史料を調査・収集し、日本側史料と内容を照らし合わせて検討した。 また、通訳官など日朝関係にかかわる者が残した記録についての史料収集・分析を進めた。その作業の前提として、在韓日本関係史料の調査を実施した。韓国・国立中央図書館所蔵本については、すでに蔵書目録が作成されているので、それにしたがってまず全体像の把握につとめ、ソウル大学所蔵本・韓国学中央研究院所蔵本・釜山広域市立市民図書館所蔵本などについても調査をおこなった。これらの成果の一部を、「韓国所在の近世日本関係史料について」(『歴史評論』834号、2019年10月)として発表した。これらの史料については、これまでは主に文学・語学の分野から書誌学的検討がなされてきたが、今後歴史学の分野からも取り組む必要がある。本研究では、そのうち日朝関係・東アジア国際関係にかんする史料の分析を始めたところである。 これら今年度の研究成果については、論文や、国際シンポジウムや韓国の学会・大学講座での発表を通じて、国内外への研究成果の発信を積極的におこない、学術交流を通して知見を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対馬宗家文書は、日本国内各地および韓国国史編纂委員会に分散して所蔵されているが、そのうち多くを所蔵する長崎県立対馬歴史民俗資料館が閉館中のため、現状、韓国国史編纂委員会所蔵分に多くを依拠する形で研究を進めている。年度末には、COVID-19の影響で、韓国での史料調査・収集を中途で切り上げざるを得なくなったが、それまでに収集したものの分析で継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記したとおり、長崎県立対馬歴史民俗資料館の史料閲覧が不可能なことに加え、COVID-19の影響で、韓国国史編纂委員会での史料調査・収集がかなわない状況である。国内の移動も自粛するようとの現状から、国立国会図書館や東京大学史料編纂所への出張もかなわない。ひとまずは、これまでに収集した史料や、あるいはマイクロフィルムで刊行されている対馬藩政史料を活用し、時代を19世紀後半にまで広げて研究を進める。状況が改善に向かい次第、東京大学や韓国国史編纂委員会での史料収集をおこない、分析に加えたい。
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