2019 Fiscal Year Research-status Report
近世初期の京都・大坂・伏見の関係からみた首都の多元性
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19K13333
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
谷 徹也 立命館大学, 文学部, 准教授 (10781940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 伏見 / 畿内・近国 / 首都論 / 三都 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる2019年度は、基礎的な史料や文献収集に重点をおいて研究を進めた。東京大学史料編纂所をはじめとする各所への史料調査によって、近世初頭の京都・大坂・伏見に関する史料を収集することができた。同時に、三都に関する研究成果を集め、政治史だけではなく、都市史・経済史・建築史など幅広い分野からの蓄積と到達点について概要を把握した。 上記のように収集した研究や史料に即した分析については、三都のうち、特に伏見に焦点をあてて研究を進めた。その結果、戦国期から寛永期に至る伏見城と城下町の変遷、及びその国家的位置づけについて一定の見通しを得ることができた。 まずは、前史について。豊臣期以前の伏見については、従来は『看聞日記』が中心であったが、それ以後の伏見荘の状況について、在住する住民に即した検討を行うことができた。そこから、伏見においても中央の政治的動向と照応する変動を読み取った。 ついで、織豊期の伏見については、伏見城の普請過程について整理することができた。従来は必ずしも明らかでなかった普請関係文書の年次比定を進め、普請の主体やその経過が明らかとなった。 また、豊臣・徳川期の城下町の行政と住民の動向についても検討を進めた。伏見の都市域拡大は、伏見の首都化の過程と密接に関連しており、後の江戸で生じる問題の根源を確かめることができた。 以上のように、伏見に即して検討を深めた結果、京都・江戸との関係性・連続性や、京郊地域から武家の首都への変質といった興味深い論点を抽出することができた。なお、これらの検討については今年度中にいくつかの原稿をまとめることができたので、2020年度以降、成果が刊行・公表されることが見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標である三都の史料収集及び分析について、一定の見通しと成果を得ることができた。また、その成果は既に原稿化しており、近日中に公表される予定である。ただし、三都のうちでは京都に関する史料・研究が膨大な量に及ぶことが見込まれるため、次年度の優先課題としたい。なお、こうした作業段階は当初予定していた通りであり、上記の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を基にすると、伏見や大坂に比べて残存する史料や研究蓄積が膨大な京都については、収集と分析に時間がかかることが予想され、次年度は京都について集中的に取り組むことが最善であると判断される。よって、引き続き三都全般の史料収集を行いつつ、特に京都に関する考察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額については、若手研究における独立基盤形成支援(試行)としての費用であり、大型の設備投資・環境整備のために2021年度までに消化する予定である。
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Research Products
(2 results)