2020 Fiscal Year Research-status Report
近世公家領における領主支配の研究―近衛家領伊丹郷町を事例に―
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19K13335
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 明恵 神戸大学, 人文学研究科, 特命助教 (30824528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世公家領 / 在郷町 / 在郷町運営 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究計画である近衛家代官と伊丹郷町役人との政治・金融関係の解明に基づき 、伊丹市立博物館において、小西新右衛門氏文書・小西家萬歳蔵資料の近衛家代官書状の調査を進めた。また、2019年度新型コロナウイルス感染拡大の影響により十分調査を進めることができなかった、伊丹郷町町人への貸付帳簿(小西新右衛門氏文書)の史料調査を実施した。貸付帳簿については虫損甚大のため固着を展開し利用可能な状態に復し、書状・貸付帳簿ともに写真撮影を行った(総撮影コマ数は2,032コマ)。また、研究計画調書では近衛文書「雑事日記」の調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により調査の実施が困難となったため、近世後期の近衛家当主の日記である「忠煕公記」のデジタル資料を京都府立京都学・歴彩館において閲覧した。 以上の調査によって、2019年度来調査を進めてきた伊丹郷町における酒造家個人の近衛家下付金の借用だけでなく、村方百姓による借用の様相も一定明らかにできたほか、近衛家下付金借用時の質物証文控の調査により、近衛家下付金借用のより具体的な様相を明らかにすることができた。近衛家代官書状からは、幕末期における近衛家代官と町役人とによる政治情報の供与の実態が新たに分かり、金融・経済的側面や町政一般にかかわらない情報交換の様相を検討した。 また昨年度から引き続き、近衛家家領経営の基礎分析として、すでに写真撮影済みである小西酒造所蔵「小西家萬歳蔵資料」の年貢関係文書の翻刻を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響による史料調査の停滞が一部あったものの、2019年度に実施できなかった調査も合わせて進めることができ、また代替の史料調査を行うといった措置を講じたため、おおむね計画通りの進捗となった。年間を通じて史料調査を制限せざるを得ない状況ではあったが、すでに写真撮影済みの「小西家萬歳蔵資料」もあわせて利用するなどし、資料所蔵機関等での調査を要することなく研究目的を達成するための方策を講じた。
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Strategy for Future Research Activity |
伊丹市立博物館での史料調査はおおむね実施できているが、一部の史料所蔵機関では依然として調査が困難な状況が継続している。史料所蔵機関での調査が可能になり次第調査を進め、調査の遅れを回復する。 2021年度は2019・2020年度で調査を完了できなかった近衛家下付金貸付帳簿および近衛家代官書状の調査を継続するとともに、当初計画通りに研究を進める。
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Causes of Carryover |
所属機関が定める新型コロナウイルス感染拡大防止のための活動制限指針に基づき、感染流行地域への出張を自粛しているため、主に東京への史料調査のための出張を取り止めている。また、史料調査補助のための謝金支払いを予定していたが、新型コロナウイルス感染防止のため、調査を単独で行うこととした。そのため、旅費および人件費・謝金の支出が大幅に減少し、次年度使用が生じた。 新型コロナウイルス感染症の流行状況および資料所蔵機関の状況をかんがみ出張を再開する計画としている。また謝金支払いについては、感染状況を考慮し、可能であれば史料調査補助の協力を得ることとする。
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