2019 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦後日本の治安体制の多角的研究:国際的位置づけと日本的特徴
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19K13339
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
萩原 淳 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (50757565)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 司法省 / 警察 / 治安維持法 / 治安警察法 / 検察 / 内務省 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「結社」をめぐる概念・取締法の歴史的展開について、研究を進めた。治安維持法は「結社取締法」として成立した。しかし、先行研究では治安維持法そのものに焦点が当てられ、近代日本の治安法形成における「結社」の概念・取締法の形成・変質過程はいわば研究史上の盲点となっている。 今年度の調査としては、特に国立国会図書館議会官庁資料室などに赴き、治安警察法、治安維持法による結社関係の取締りの実態を『司法省年報 法務図書館所蔵』( 司法省刑事統計年報)の「通常第一審事件中特別法犯終局被告人の科刑其他」の欄から、明治期から昭和戦前期に至るまでの治安警察法・治安維持法による検挙者の人数を追い、整理した。また、官憲側の史料だけでなく、国会図書館などで積極的に雑誌を収集し、分析を進めた。特に、戦前の日本共産党系の弁護士で、人権派と目された、布施辰治の「秘密結社取締法の變遷」(『国際文化 : 国際文化研究所機關紙』。同雑誌は京都大学人文科学研究所図書館所蔵)などを発見し、弾圧される側の認識を含め、分析を進めた。さらに、帝国議会の議事録を調査し、議会議事録にに収録されている議論を追った。 ただ、後期の講義期間後に予定していた調査について、「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の影響で、大学側から出張の自粛要請が出たため、予定していた調査を実施できなくなった。そのため、論文としてまとめるまでにはいたらなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は未公刊史料を多く用いる点に特色があり、それらを調査するためには、申請者自らが何度も現地に赴く必要がある。しかし、後期の講義期間後に予定していた調査について、「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の影響で、予定していた調査を実施できなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)が終息するまで、国会図書館デジタルコレクション及び、国会図書館の遠隔複写サービス、図書館のILLサービスを積極的に活用し、できる範囲で調査を進める。また、なるべく早期に研究をまとめ、論文とすることを目指す。
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Causes of Carryover |
「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の影響で、大学側から出張の自粛要請が出たため、予定していた調査を実施できなくなった。そのため、調査で支出を予定していた旅費が余り、次年度に繰り越すことになった。「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の終息はまだ専門家でも見通すことができない状況であり、断定的な事は言えない。しかし、終息後は実施できなかった東京での実地調査を至急行う。
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