2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13340
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
大知 徳子 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 講師 (50549243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 野坂文書 / 大願寺文書 / 厳島神社 / 宮島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宮島に伝来する文書のうち、「野坂文書」をはじめとする『広島県史 古代中世資料編』Ⅱ・Ⅲ(厳島文書編1・2)に未収録の中世文書を活字化し、「野坂文書」の近世文書と、未整理の「大願寺文書」等の目録を作成・分析することにより、中近世移行期における厳島神社の継承と変質を明らかにしようとするものである。 計画段階では、当該年度に厳島神社と相談の上、「史料所在目録」を参考にして宮島歴史民俗資料館が管理する写真版を元に、関ヶ原合戦以前の中世文書を活字化し、最終年度に「大願寺文書」(近世文書)等を調査する予定であった。 しかしながら、「野坂文書」及び「大願寺文書」の所蔵者との相談により、まず当該年度に「大願寺文書」(近世文書)の調査をおこない、続いて最終年度に「野坂文書」の調査をおこなうこととなった。 このため、当該年度は大願寺(宮島)が所蔵する「大願寺文書」を調査した(令和元年8月~令和2年3月)。研究開始当初、所蔵者より、戦後~平成20年代におこなわれた調査により、所在不明となった文書や、未整理のまま保管されている古文書があることを知らされた。そこで、まずは大願寺が所蔵するすべての古文書(約1100点)について、『広島県史』・『宮島町史』編纂の際に撮影された写真版と原本とを突き合わせ、所在確認をおこなった。あわせてすべての文書に関する基本情報の目録を作成した。 これにより、所在不明とされていた中世文書およそ10点を確認した。また、近世文書として整理されていた文書群の中から、新たに19点の中世文書を発見し、写真撮影をおこなった。また、これまで写真版が公表されていない文書約20点の写真撮影をおこなった。 「野坂文書」の調査については、最終年度の調査に向けて、「史料所在目録」及宮島歴史民俗資料館が管理する写真版を元に、関ヶ原合戦以前の中世文書の選別作業をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
厳島神社及び大願寺との交渉により、当初の計画とは異なる順序で調査をおこなうこととなった。また、大願寺文書の中に、所在不明となっている古文書が複数あり、調査の途中で文化財害虫による被害が確認されることなどから、応急処置を施す等、当初予期していなかった事態が発生した。 しかしながら、大願寺が所蔵するすべての古文書の所在確認をすることができ、近世文書にとして整理されていた文書群の中から、中世文書を発見することができた。 また、未公表の古文書群を発見し、写真撮影をおこない、目録の原案を作成することができた。新型コロナウイルスの感染拡大により、3月におこなう予定であった調査が、一部中止になったため、目録の完成には至らなかったが、最終年度の完成を目指したい。 「野坂文書」の調査については、当該年度のうちに所蔵者の了解を得ることができた。文書が寄託されている宮島歴史民俗資料館からも調査の了解を得ることができた。 3月中に調査を開始する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、調査を延期することとなったが、「史料所在目録」及び宮島歴史民俗資料館が管理する写真版を元に、関ヶ原合戦以前の中世文書の選別作業をおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、「大願寺文書」の目録を完成させ、近世文書として整理されていた中世文書の翻字をおこないたい。 また、「野坂文書」の調査をおこない、近世文書として整理されていた中世文書の翻字をおこないたい。 なお、当該年度の調査により、「大願寺文書」の分量が当初の予想より多いことが判明したため、当初計画していた「上卿文書」の調査は断念し、「大願寺文書」と「野坂文書」の目録の作成を続けるとともに、所蔵者と相談の上、近代以降の個人情報の詳細が掲載されている史料を除き、島内の造営事業や厳島社役に関係する文書を中心に活字化し、研究成果報告書を作成したい。
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Causes of Carryover |
令和2年3月に実施する予定であった「大願寺文書」および「野坂文書」の調査が、新型コロナウイルスの感染拡大により、令和2年4月以降に延期することとなった。このため、最終年度に改めて調査をおこない、調査費として旅費及び学生アルバイトの報償費として使用したい。 次年度は「大願寺文書」の調査を継続するとともに、新たに「野坂文書」の調査を開始する。調査の補助をおこなう学生アルバイトを雇用して報償費を支出する。 物品費として調査に必要な文具等を購入するほか、調査報告書の印刷経費も支出する。
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