2019 Fiscal Year Research-status Report
書状形式の文書からみた日本中世の政治的コミュニケーションと国制-鎌倉期を中心に
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19K13346
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 雄基 立教大学, 文学部, 准教授 (00726573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古文書学 / 日本中世史 / 日本古代史 / 東アジア古文書学 / 書状 / 口入 / 書下年号 / 鎌倉幕府 |
Outline of Annual Research Achievements |
一年目の作業は大別して次の2つである。 第一に、鎌倉幕府関係者の発給した書状の収集を中心に行った。代表者は2018年の論文「文書史からみた鎌倉幕府と北条氏」において、北条貞時・高時の発給した「得宗の書状」の分析を行い、それらが従来の幕府支配圏内を越えて機能した様相を論じたが、「得宗の書状」の歴史的前提となる「将軍の書状」「執権の書状」について検討した。その成果をまとめるには至っていないが、中間報告的な研究ノート「鎌倉北条氏の書状 序説 ― 北条時政・義時・泰時の書状について」を執筆し、書状の網羅的検討とともに、所謂「執権政治」成立期における執権権力の性格をさぐった(2020年度中に刊行される『国立歴史民俗博物館研究報告』掲載予定)。
第二に、日本的な書状がどのようにして成立したのかに関して概論的な論文を執筆した(論文「中世日本における書状の広がり」)。そこで論じたのは次の諸点である。①古代文書論における「書状」研究の進展を踏まえ、奈良時代の書状がどのようにして中世的な書状になるのか、平安時代における変化について再検討した。また、東アジア古文書学的な観点の重要性を喚起した。②公私混淆による「書状の公文書化」、公文書と私文書の二大潮流という古典学説の理解に対して、「官文書」と書状が文書の二大様式であり、書状は奈良時代以来、公的な機能を果たす場合もあったことを論じた。③中世における変化の特徴は権利文書としての受容・発給にあるが、その背景には有力者の口利き(口入)が重視されたという法社会史的要因がある。④院宣・綸旨における書下年号の登場を論じた。
第二と関わって日本書状の概論を中国語で発表したほか、中国古文書学の状況を国内向けにレポートし、比較史的観点から日本古文書学の性格を論じた。また、鎌倉幕府文書論に関する最新の研究である佐藤秀成著『鎌倉幕府文書行政論』の書評を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未刊行史料の調査は後回しにしてしまい、刊本を中心にしてではあるが、おおよそ作業は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2020年度は、コロナ対策のために史料所蔵機関の調査が困難になることが予想され、1年目に未公刊史料の調査を「後回し」にしたことに起因する支障が一部に生じる可能性があるが、刊本および写真を入手できるものを中心にして、鎌倉期の書状の悉皆調査を継続しつつ、「書状」からみた日本古文書学の体系論の再構築を目指したい。
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Causes of Carryover |
1016円の残額が生じたのは、購入予定の書籍の刊行が遅れたためである。次年度に購入して使用する予定である。
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Research Products
(9 results)