2021 Fiscal Year Research-status Report
書状形式の文書からみた日本中世の政治的コミュニケーションと国制-鎌倉期を中心に
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19K13346
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 雄基 立教大学, 文学部, 教授 (00726573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本中世史 / 鎌倉幕府 / 古文書学 / 書状 / 御成敗式目 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は公刊された史料集を利用して、効率的に研究を進めることができた。その一端は、鎌倉幕府の判決文書に証拠文書として引用されている書状の事例を収集し、「書状を手にした武士たち―鎌倉幕府判決文書から探る文書実践―」として国際シンポジウム「中世社会と書状―文書実践の日欧比較―」(2022年3月10日オンライン開催)において研究発表をおこなった。そこで取り扱った事例のほとんどは書状それ自体は現存しておらず、引用されていることから存在が知られるだけのものである。歴史学の研究は現在に残された史料に基づいて「実証的」に行われるが、後世に伝わった史料は同時代に作成されていたテクストのうちのごく一部である(全く残らないものも多い)ことに自覚的である必要がある。「現在伝わっていない史料からどう全体像を組み立てるのか」という問題提起とともに、鎌倉時代の武士たちが書状をどのように理解し、権利主張に利用していたのか、武士たちの法的・文書リテラシーを明らかにするとともに、それに対応して鎌倉幕府がどのように武士たちの書状を理解し、処理していたのかを具体例からみた。 また、鎌倉幕府の制定法である「御成敗式目」を同時代の関連史料と合わせて分析する作業を進め、「御成敗式目の現代語訳はどうして難しいのか:立法技術・語彙・本文に関する覚え書き」(『立教史学』5号、2022年2月)を執筆した。 これらの作業を通して、書状を利用する武士たちの動きやその法的な環境を復元する見通しが立った。 さらに書状が利用される「場」として裁判があるが、中世国家研究史上「裁判」が果たした重要性に関して、「鎌倉幕府の裁判と中世国家論 : 裁判から「国家とは何か」を論じられるのか」で考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染拡大の影響によって、また、国際共同研究の科研によってイギリス・ケンブリッジ大学に滞在していたため、本年度は史料調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染拡大中は実施できなかった文書調査を実施する。 また、鎌倉時代の書状利用に関するこれまでの研究を集大成する論文を執筆し、投稿することを目指すほか、日欧書状比較の国際ワークショップを開き、成果の発信と共有、議論の進展を目指したい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大のため史料調査などが実施できなかったため。次年度には延期した史料調査などを行う予定である。
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Research Products
(4 results)