2021 Fiscal Year Research-status Report
外交文書の「見た目」から読み解く近世日朝関係の特質
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19K13356
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Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
牧野 雅司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10754301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日朝関係 / 外交文書 / 対馬 / 朝鮮 / 書契 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も昨年度から引き続き、書契のデータベース化を進めた。また、同時に国立国会図書館所蔵『分類紀事大綱』など、同時代の周辺史料についても調査・収集を行った。いまだデータベース化が不十分ではあるものの、当初想定していた画期と書契の規則が変化し、形成されていく時期がほぼ同じであることが確認できつつある。ただし、その規則が形成されていく契機となるものが何であるかは、いくつかの仮説を立てることができ、いまだ確定するには至っていない。この点については、当初想定していたものとは異なる結果を導き出すことができる可能性もある。 具体的には、研究開始当初は、国家と国家との関係、すなわち江戸幕府の将軍と朝鮮国王との間の関係を対等なものとすることが主であると想定していた。この点は前提として動かないと考えられる。しかし、対馬藩は問題なしと判断した書契の異例については、朝鮮側の意向を柔軟に受けとめ、規則を改変しようとする姿勢を示している事例が多い。明治維新期と同様、異例はただ排除するものではなく、交渉の過程のなかで選択的に受容される、いわば「緩さ」をもったものだったと言えるだろう。そうした「緩さ」を見出した点は、今年度の研究の一つの成果と言える。ただし、そうした場合であっても、反論を行う場合もあり、受け入れ方についても差異が見られる。こうした差異が何から生み出されるものなのかは、より広範に史料を収集し、分析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスへの対応のため、満足な史料調査を行うことができなかった。当初の計画では、東京の国立国会図書館や慶応大学附属図書館、対馬の長崎県立対馬歴史民俗資料館、また大韓民国国史編纂委員会への調査を行う予定であった。しかし、こうした調査を行うことが一切できず、史料の収集については遅れが目立つようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は事業の最終年度であるため、成果の公表を目指す。ただし、前述のように研究の進捗状況は満足なものではない。そのため、対象とする時期を限定し、近世中期までを目処としてデータベース化を行い、それを中心として分析を進めることとする。また、社会情勢を見ながら、史料調査についても再開していきたい。 成果の公表については、投稿論文の執筆とともに、学会での報告も行う。また、社会貢献として、愛知サマーセミナー2022での発表を予定しており、研究成果を広く市民に公開する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染防止対策により、史料調査のための出張を取りやめざるを得なかった。そのため、請求していた旅費を使用することができず、次年度使用額が発生した。
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