2022 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the Wooden Tablets in Medieval Period in Japan
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19K13358
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
服部 光真 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00746498)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 木札 / 金石文 / 中世史料学 / 三河普門寺 / 遠江本興寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の中世史料学では、木札など紙以外の素材に記された史料を特殊例外視せず、紙に記された文書を相対化しうる、基本的な中世史料の一つとして位置づけられつつある。本研究では、こうした成果を踏まえて、中世木札文書の事例収集によるデータベース化、個別の木札の原物調査による形態論・機能論的検討により、中世木札文書の類型化、歴史的変遷および史料的特質を明らかにするものである。 本年度は、三河普門寺、遠江本興寺における関連史料の調査および分析、事例の収集作業を継続しつつ、木札史料論としての概括的な検討を行い、「Wooden Tablets Produced in Temples in Medieval Japan」と題して、ハーバード大学で開催されたワークショップ「Expanding the Range of Japanese Buddhist and Religious Studies Workshop」にて口頭発表を行った。この発表は、基盤研究(A)「デジタル技術による金石文史料の研究資源化と学融合的歴史叙述への応用研究」(研究代表者・菊地大樹氏)の招待によるものである。本発表では、昨年度公刊した論文「中世木札研究の一視点―庶民信仰資料・仏教民俗資料と金石文をめぐって―」をもとに、これを発展させる形で木札資料の中世史料全体の位置についてまとめ直すとともに、木札資料の機能論として、公開性・秘匿性の観点から整理し直した。中世宗教史を広げることを目的とするこのワークショップの趣旨は、木札・金石文史料を、古文書中心に組み立てられた中世史料学のなかに積極的に位置付けることを意図してきた本科研と問題意識を共通とするところも大きく、有意義な意見交流ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、当初の予定通りの出張がかなわず、各寺社での史料の現物調査や図書館等での文献調査の進捗に大幅に遅れが生じているため。また、木札資料所蔵寺院での関連史料の調査では新たに確認された史料もあり、その現物調査による資料化、分析を進め、それを踏まえて成果をまとめていく必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の1ヶ年延長が承認されたため、この延長期間の間に、遅れている調査を進め、成果をまとめていく予定である。また新たに確認された木札資料所蔵寺院での関連史料の調査およびその資料化も、この期間中に進めることで、対応可能である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた調査のための出張が行えなかったため、旅費の執行ができなかった。それに伴い、研究全体の成果のまとめにも遅れが生じ、成果物の印刷・発送に見込んでいた諸費用も一部執行できなかった。 次年度は当初予定していた現地調査をこなしていく。また調査を進展させていくとともに、その成果も踏まえた研究全体の成果のまとめも進めていく予定である。
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