2019 Fiscal Year Research-status Report
中央ユーラシア草原地帯における初期青銅器生産体制と流通
Project/Area Number |
19K13403
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
荒 友里子 愛媛大学, アジア古代産業考古学研究センター, 研究員 (90783853)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ロシア / 中央アジア / 中央ユーラシア / 古代銅生産 / 冶金考古学 / 生産と流通 / 青銅器 / 青銅器時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中央ユーラシア草原地帯において青銅器の生産が増大した前二千年紀初頭から中頃にかけての社会経済の特質や地域間の影響を、より具体的な次元で提示することである。この目的を達成するため、本研究では当該期において青銅器生産の中心地であったロシア中部とカザフスタンを軸に、青銅器とその生産に関わる遺跡・遺物の調査を実施する。 本研究の基盤は、各地域の青銅器の研究、冶金関連遺物の研究、冶金関連遺構の研究の三つからなる。それぞれ①文献からの情報収集、②聞き取り調査、③研究機関での考古資料観察 をもとに分析・考察し、最終的な研究目的の達成へとアプローチしていく。研究初年度の2019年度は、①を恒常的に行いつつ、ロシアやカザフスタンの研究者に対象資料の所在確認や調査交渉(②に該当)を行い、大阪での金属生産関連遺物の資料調査を実施した(③に該当)。また、三年目、四年目に実施を計画している銅製錬実験に向けて、実験用具や材料、実験方法や手順の参考とするために、製鉄実験へ2回参加した。 ①~③の実施により、青銅器・冶金関連遺物・冶金関連遺構それぞれに関する情報の集積は順調に進んでいる。本年度は特に冶金関連遺物の研究において進展があった。ロシアのウラル地域やカザフスタン中部の冶金関連土器について、その種類と使用方法、年代差と分布について検討を行った。その結果、碗形容器、皿形容器、平底容器、舟形容器、冶金関連土器片があり、碗形容器や皿形容器は金属を溶解しそのまま鋳型に鋳込むことができる土器炉であること、平底容器や舟形容器は鋳込みの際の補助具である可能性が高いことなどを示した。この研究成果は2020年度発行の雑誌に掲載される。 冶金関連遺構に関しても、②の過程において、従来考えられていた銅冶金炉の系譜や分布のありかたを覆す発見があった。このことについても、分析・考察を進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID19の影響により、2020年2月末から3月初旬にかけて行う予定だったカザフスタン東部での資料調査の中止を余儀なくされたため、研究の遂行に一部支障が出ている。しかしながら国内の資料調査は実施でき、文献や現地の研究者とのやり取りの中で有益な情報を得て、冶金関連遺物の一つである冶金関連土器に関しては論考も執筆できた。製錬実験を行うための下準備も進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年5月末現在、COVID19感染拡大の影響により、海外・国内問わず現地での資料調査ができない状況が続いている。発表を予定していた国際学会も延期となった。このような状況の中でも研究を滞らせないように、以下の作業を進めていく。 1)資料調査が再開できるまでは、文献からの情報収集の量・質を上げていきながら、現地研究者と連絡を密に取り、遺跡の調査情報や新規発見の情報を集積する。 2)学会の新たな日程は未定であるが、発表準備を進めておく。 3)銅製錬実験の準備のために、関係各所との連絡を密に行う。
|
Causes of Carryover |
当初、青銅器と冶金関連遺物の調査のためにカザフスタンに渡航する予定であったが、COVID19の影響で渡航ができなったため残額が生じた。渡航解除および出張許可が下り次第カザフスタンでの調査を行う予定であるため、残額分はこの研究調査渡航費にあてる。
|