2019 Fiscal Year Research-status Report
再考:海と山の縄文人 ‐四肢骨骨幹部から縄文人の生活様式を復元する‐
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19K13418
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
萩原 康雄 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (00780256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 縄文時代人 / 地域差 / 第三中手骨 / 橈骨 / 腓骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本列島各地から出土した縄文時代人骨の網羅的な資料調査を実施,解析することで,縄文時代人四肢骨の形態的特徴と,その地域,時期的な多様性と共通性,そしてその背景にある縄文時代人の生活様式を明らかにすることを目的とするものである. 本年度の資料調査では,北海道,関東地方,東北地方,山陽地方の遺跡から出土した縄文時代人骨を中心に各地の研究機関でデータを計測した。本年度に計測した資料は98個体であり,申請者がこれまでに収集してきたデータと合わせると577個体となった. これらのデータセットを用いて解析を行い,以下の結果が得られた.1)縄文時代人の第三中手骨骨幹部は現代日本人と比較して背掌方向に扁平である.背掌方向に扁平な第三中手骨骨幹部の形態は,縄文時代人の手掌部には背掌方向へ強い日常的な負荷が課されていた可能性を示唆する.2)縄文時代後晩期の貝塚集団のなかでも,東海地方の男性では橈骨が他地域の男性と比較して明らかに頑丈である.この結果は,同時期かつ同じ海岸部の縄文時代集団間でも,前腕部に課される日常的な負荷のパターンが異なっていた可能性を示唆するものである.3)縄文時代人の腓骨は現代人と比較して,特に骨幹中央部付近が前方凸の弯曲をする特徴をもつ.これは縄文時代人の腓骨には現代日本人とは異なる負荷が課されていた可能性を示唆するものである。これらの結果から,現在1篇の論文を投稿中,1編を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は若干の資料調査日程の変更はあったものの,当初の予定と大幅な変更なく進行している.得られたデータから,成果も上がっているため順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して積極的に資料調査を実施する予定である.また,これまでに得られたデータの解析も並行して進めることで,四肢骨形態から縄文時代人の時期的,地域的な生活様式の多様性と共通性を復元することを目標とする.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で3月の資料調査出張,参加予定の学会が中止となった.そのため,旅費が当初の予定よりも少なかった.実施できなかった資料調査は次年度以降に実施する予定である.
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Research Products
(2 results)