2022 Fiscal Year Annual Research Report
再考:海と山の縄文人 ‐四肢骨骨幹部から縄文人の生活様式を復元する‐
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19K13418
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
萩原 康雄 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (00780256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 四肢骨形態 / 時期差 / 地理的環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本列島から出土した縄文時代人骨の網羅的調査を通じて,地理的環境の違いや,時代経過に伴う社会構造の変化によって,縄文人の骨形態と,その背景にある行動様式にどのような多様性と共通性が認められるのか,を解明することを目的とした. 2022年度は,COVID-19感染症の影響で2020・2021年度に実施できていなかった資料調査を積極的に行い,計140個体の縄文人骨を計測した.これにより,縄文人の四肢骨の計測数は,一部個体識別のできていない散乱人骨資料を含むものの,累計で760体となった.そして,地理情報システム(GIS)を用いて,178の縄文時代遺跡周囲の地理的環境を定量化した.上記のデータを解析し,以下の結果が確認できた.①下肢骨形態への遺跡周囲の地理的環境の影響は男性よりも女性で顕著に認められ,縄文時代早期から晩期を通じて,標高が高く勾配が強い(山間部)遺跡の女性は,標高が低く勾配の緩やかな(平地部)遺跡の女性と比較して大腿骨が柱状,脛骨が扁平な傾向がある.男性でも早前期では,山間部集団の方が平地部集団よりも大腿骨が柱状,脛骨が扁平な傾向がある.中後晩期男性の大腿骨と脛骨は地理的環境を問わず,柱状かつ扁平な傾向を示す.②縄文時代早前期の男性,早期~晩期の女性では,平地部の集団が山間部の集団と比較して脛骨に比して上腕骨が頑丈な傾向がある.③中後晩期平地部の男性は橈骨が尺骨に比較して頑丈である. 本研究課題を通じた成果は以下の通りである. (1)縄文人の中手骨骨幹部は彼らの大腿骨骨幹部に見られるような柱状の形態を示す, (2)縄文人の腓骨骨幹部は骨幹中央部周囲が前方凸に弯曲する,(3)縄文人の四肢骨骨幹部に上記のような時期,地理的環境の影響を認める.これらの成果は国際誌に2編が採択済みであり,1編を投稿準備中である.
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Research Products
(1 results)