2019 Fiscal Year Research-status Report
博物館における哺乳類の3D資料の収集・保存の意義と活用:クジラを例に
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19K13428
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
宮川 尚子 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (10805740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 3D資料 / 鯨類 |
Outline of Annual Research Achievements |
3D技術は科学研究・教育など多方面に活用され始めている。現生哺乳類分野でも3D技術の活用範囲を拡大することで、研究・教育に新たな効果をもたらす可能性があり、特にクジラ類はその効果が高く期待される。クジラ類は突発的に座礁する個体が研究材料になることも多いため、計画的な調査ができずに解体もしくは埋設されてしまい、収集できる情報量が制限されてしまうことも少なくない。しかし、解体時に消失してしまう外部形態などを3D化できれば、再現性のある立体情報の記録が可能になる。また、クジラは超大型であるが故に、多くの標本を保管するとができない上に、複数個体の同時観察も困難であった。そこで、3Dプリンタにより縮小模型を作成すれば、手に取っての観察や複数種の同時観察が可能になる上に、ハンズ・オン教材として使用することもできる。そこで、本研究では、哺乳類分野における3D技術の有用性についてクジラをモデル生物として検証し、新たな研究・教育手法の確立を目指す。 今年度は、千葉県内で発生した鯨類の座礁現場に赴き、座礁した個体の写真撮影を実施したのち、解体して骨格等の採取を行った。撮影した写真を用いてフォトグラメトリーにより座礁した状態の鯨体の3D復元を試みた。採取した骨格は標本化作業を行っており、標本が完成した際には骨格の3Dデータも取得し、同一個体の外部形態・骨格の3Dデータの取得を目指す。また、ナガスクジラ科鯨類およびマッコウクジラの頭骨の縮小模型を3Dプリンタで打ち出し、千葉県立中央博物館の企画展においてハンズ・オン標本として試験的に展示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、フォトグラメトリーによる座礁現場の3Dデータ化、回収した座礁個体の骨格標本の作成、作成した標本および自身が所属する博物館の収蔵資料(鯨類骨格)の3D化作業を予定していた。座礁現場の3Dデータ取得および骨格標本の作成作業をは概ね予定通り実施できた。しかし、想定外の所属博物館の業務が重なり、作成した骨格標本および収蔵資料の3Dデータ化を行うことができなかった。そのため、3Dデータ化については、当初の想定より進捗が遅れている。 また、3Dプリンタで打ち出した鯨類頭骨の縮小模型は2種類の素材で作成し、所属博物館の企画展等に使用することで耐久性等の予備調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
座礁現場の3Dデータ化を継続するとともに所属博物館および他機関収蔵の鯨類骨格標本の3Dデータ化を進める。カラーの3Dプリンタを導入し、骨格および座礁現場の縮小模型を作成する。これらの縮小模型を研究、展示およびイベント等に活用することで研究への有用性および教育普及効果を検証する。
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Causes of Carryover |
想定外の所属博物館の業務が重なったことにより、一部の調査や実験は予定通りに実施できなかった。そのため、実施できなかった調査や実験に必要な機器の購入を先送りにした。3Dデータの取得はフォトグラメトリーによる座礁現場のデータ取得を優先し、他機関や当館所蔵の標本を3Dスキャナを使ってのデータ取得は行わなかった。そのため、3Dスキャナの購入を行わなかった。また、3Dプリンタも同一機種で異なる素材の比較の予備実験を優先し、造形方法の比較のために新規機種購入はしなかった。これに伴い、3Dプリントの素材も購入していない。さらに他機関への調査もできなかったため、旅費等も使用しなかった。 次年度は、購入を先送りにした光造形方式の3Dプリンタ、フルカラーの3Dプリンタ、3Dスキャナ等の機器を購入する予定。加えて、3Dプリントや標本作成に必要な素材や付属品の購入し、3Dデータの取得・3Dプリントの造形物比較を行う予定。
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