2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on Interpretative Materials that Accommodate Personal Context through Information and Communication Technology
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19K13430
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
中村 麻友美 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, アソシエイトフェロー (60811289)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 展示解説 / ICT / 外国人来館者 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる令和元年度は、主に1)他館のICT活用事例調査と、2)解説アプリケーションの開発を進めた。 1)韓国の公立・市立のミュージアム、国内ではミュージアムに限らずのICT技術を利用した取組みの調査を行った。また、来日した欧米諸国の研究者と意見交換をする機会を得た。その際、「個人ごとに異なるニーズにあわせた解説」「(ICT技術を用い)来館前、来館中、来館後をつなぐ」という観点からヒアリングを行った。外国人来館者対応は各国で課題になっており、積極的に多言語対応を進めている。しかし、国籍や文化背景に応じて解説の内容を変えることは考えておらず、予算が確保できれば、解説の内容よりも提供できる言語の種類を増やしたいという見解が多かった。ICTの活用について、ヒアリングを行った時点では、高精細映像により作品をズームアップしたり、作品の裏側を見せたり、絵の中の人物を動かして物語を想像させるなど、展示室での展示鑑賞の補助ツールとして用いる館が多かった。もう一つの流れとしては、例えばソウル歴史博物館の「VR Exhibition」のように過去の展覧会を360度カメラで撮影し、展示空間そのものを3Dデータ化し、アーカイブするものがある。これは、2020年5月時点、日本を含め世界各国で多くの例がある。しかしながら、来館中とその前後の体験をつなぐという視点からは事例が少なかった。技術は日進月歩であるので、その最新動向を追うと同時に、技術ありきでなく何を達成するためにそれを用いるか、という視点が肝要であると改めて確信した。 2)開発中のアプリケーションには、作品解説提供の必要機能を備えたプラットフォームづくりを行ったうえで、将来的に機能を拡張できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外国人来館者が特に多い3月に来館者調査を予定していた。この調査では、来館者(日本人・外国人)にタブレットを貸し出して自由に鑑賞してもらい、館内に設置したビーコンによるログデータと、鑑賞後のアンケートから、属性による関心の違いなどを導き出すことを想定していた。調査会社と打合せを重ねていたが、調査票を作成したところで2月末に休館が決定し、調査も一旦中止となった。同じく年度末にデジタル化に特に力を入れている国立故宮博物院(台湾)を訪問する予定であったが、世界情勢を鑑み中止した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後しばらくは、申請時に計画していた来館者に向けた調査を行うのは難しい。当初は、館内での来館者の動線のログを測定する予定であったが、解説アプリケーションの操作ログをとるという方向に切り替えることを検討する。或いは、オンラインで潜在的な来館者に向けて調査をし、ニーズを探り出すことも考える必要があろう。同時に、興味に応じた解説の提供の仕方の一つとして、データベースの制作についての知見を増やしていく。しばらくは、ミュージアムに実際に来館することが特別なことになるかもしれない。しかし、このような状況だからこそ「来館前、来館中、来館後をつなぐ」という視点は益々重要になるであろう。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた来館者調査と、海外での調査が一件中止になったため。来館者調査はオンライン調査、もしくはアプリのログ解析として2年目に実行する予定である。海外調査についてはまだ目途が立たないが、元々は大掛かりな調査を予定していなかった3年目に持ち越すことを計画している。
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