2019 Fiscal Year Research-status Report
Protection of Taxpayers' Rights in International Information Exchange
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19K13505
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
漆 さき 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (00735045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際租税法 / 納税者の権利保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本における租税上の情報交換に関する具体的な手続の整備を最終目的とし、その第一段階として、まず「租税情報の取得収集・交換と、プライバシー権・自己情報コントロール権との関係を検討し、交換される情報に課されるべき制約と、当該制約違反の結果として与えられるべき救済は何かを整理する」こととしている。この問題に関連して、まず国内法独自の整備の重要性を明らかにするため、租税条約における情報交換規定がその構造上、情報交換に対する制約となり得ないことを示した。それは、①課税に結び付かない場合には調査対象納税者は調査されていたこと自体を知り得ない場合がほとんどであること、②被要請国は他国の法律上の調査の必要性を判断することが困難であること、という理由による。 一方で、ニュージーランドの判例を参考として、租税条約による要請を受けた国内法上の調査要件が制約として働き得ることを示した。そこでは、①条約上は、要請国の行った要請自体や課税庁間のやり取りが、被要請国において一定の条件のもとで、司法機関のみならず納税者および調査対象者にも開示されうると考えられること、②情報交換要請に含まれる情報が、国内法上の調査権限にかかる制約についての判断の基礎となる場合があること、③その場合には、正当な調査であることを基礎づけるために、司法機関及び納税者・調査対象者に対して要請が開示される必要があると考えられることを述べた。要請国の要請自体が被要請国の司法審査に服し、被要請国の国内法上定められる調査要件を満たすことが示される必要があることから、要請国の濫用的な要請が抑制されるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
租税条約の解釈及び国内法上の制約が租税条約の運用に影響を及ぼす可能性については分析研究が進められ、研究成果として論文が公表できている。一方で、租税条約の情報交換規定に関する歴史的検討及びプライバシー権・自己情報コントロール権といった基本権については、調査を進めているものの、未だ論文としてまとめることができていない。制度の歴史的背景については、使用する資料が比較的古い報告書等を含めて数多くあること、基本権については、新旧多くの文献から租税法への示唆をまとめるのに時間がかかっていることが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基本権および歴史的検討といった重要かつ時間のかかる部分に注力し、そういったテーマについての論文公表を積極的に進める。さらに、そのような調査の際には、第二段階として構想されており、いっそう基本権とのつながりが重要となる租税犯則事件と情報交換の関係にも留意する。
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Causes of Carryover |
国際学会に参加する予定であったが、家庭の事情で行かれなくなってしまったため。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] National Report: Japan2019
Author(s)
Saki Urushi, Michiko Suzuki
Organizer
Conference “Controlled Foreign Company Legislation” held by Vienna University of Economics and Business
Int'l Joint Research