2021 Fiscal Year Research-status Report
Protection of Taxpayers' Rights in International Information Exchange
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19K13505
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
漆 さき 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (00735045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際租税法 / 納税者の権利保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、租税回避・脱税に対する対抗策としての迅速かつ実効性のある情報交換と、①納税者のプライバシー権や防御権等の基本権、および①の検討を前提とした②手続上の権利保護の在り方のバランスを問うものである。 2019年には、国内法独自の整備の重要性を明らかにするため、租税条約における情報交換規定がその構造上、情報交換に対する制約となり得ないことを示した上で、租税条約による要請を受けた国内法上の調査要件が制約として働き得ることを示した。2020年には、租税条約における情報交換規定の歴史的な背景を分析し、その起源から租税回避の防止に焦点が当てられてきたこと、納税者の権利保護についてはその考慮の外であったことを示した。 2021年には、租税条約以外の国際的な納税者の権利保護に資する枠組みとして、EUのデータ保護指令を取り上げ、租税条約の下での自動的情報交換とデータ保護の関係について検討した。その上で、データ保護法制と課税分野における自動的情報交換につき、①その目的が調査の効率化と租税回避・脱税の抑止だとすれば、自動的情報交換はデータ保護法制の下で目的に比例的な手段だと考えられること、②データ流通を促進するために、納税者には基本的にデータ保護法制の下で認められる通知を受ける権利、アクセス権および訂正権が保障されるべきことを述べた。データ保護法制の世界的な広がり等を考慮すれば、日本においてもこれらの権利の保障を検討する意義はあると考えられる。日本における手続上の権利保護について検討する際には、データ保護権を背景とした権利と、日本での情報プライバシー権の接続について整理することが望ましいと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020~2021年にかけては、研究者の妊娠出産があったことから、なかなか予定通りに研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、日本の情報プライバシー権とデータ保護権の異同について検討するとともに、両者に照らして望ましいと考えられる手続の在り方を検討するとともに、日本における既存の手続制度との整合性を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に新型コロナウイルス感染症により、海外への渡航が中止されたこと、2021年度に産休・育休期間のため2021年度の支払請求を行わなかったことによる。2022年度は在外研究を行うこと、徐々に対面での国際学会が再開されていることから、国際学会等の参加費用に充てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)