2023 Fiscal Year Research-status Report
Protection of Taxpayers' Rights in International Information Exchange
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19K13505
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
漆 さき 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (00735045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際租税法 / 納税者の権利保護 / 情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本における租税上の情報交換に関する具体的な手続の整備を最終目的としている。2022年までに、租税情報の国際的交換について、租税条約等交換手段の中には納税者の権利保護に関する定めがなく、間接的にもそれに資する可能性が高くない一方、国内法上の調査の基礎に関する規定が間接的に情報交換要請の審査の役割を果たす可能性があることや、情報交換についてはGDPRが適用され得るため、GDPRの下で通知の権利やアクセス・訂正権等が保障される可能性があり、それらを制限する際には詳細な規定が必要とされること、GDPR類似の法制度の世界的な広がりから、日本における同様の規定の整備の必要性等を示した。 2023年度には、刑事上の国際共助が行われる際に、自国とは異なる手続の下、調査国で得られた証拠を、情報を要請した国においてどのように評価するかを参照して検討を行った。国際共助においては、自国と異なる手続、特に自国課税庁によって同じことが行われた場合には手続に瑕疵があると評価され得るような場合であっても、他国課税庁が他国法の下で行う場合に調査地では合法であるということがあり得る。そのような場合の証拠の扱いは、調査地で合法であれば一律に瑕疵がないものと評価すれば国内で行われた調査とのバランスを失する一方、厳格に裁判地の手続を要求することには執行上無理がある。検討の結果、他国で得られた証拠をどのように評価するかは、裁判地国の国内法の問題であり、いくつかの立場に分類されるものの、国内法における適切な評価に繋げるために、調査国での証拠の取得態様が明示されることが望ましいと考えられることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年9月に在外研究から帰国し、帰国後の子の保育園入園等に少し時間を要したこと、授業負担が通常よりも多かったことなどが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における租税情報のプライバシー権に関する議論およびより一般的な情報プライバシー権に関する議論をまとめた上で、日本が情報交換において被要請国になった場合に問題となり得る手続上の問題、要請国になった場合に問題となり得る取得した情報の評価の問題をそれぞれ整理する。日本が被要請国になった場合には、その情報交換の対象となる納税者や情報提供を求める第三者等に対して、情報提供自体について、情報プライバシー権等に基づいて通知を行うか、それに続いて不服申立て等を認めるか、その具体的な手段として、処分性の拡大を行うか、といった問題が考えられる。また、要請国となった場合には、日本法の下での情報プライバシー権が侵害されている可能性のある状況で、他国において取得された情報をどのように評価するかといった問題が考えらえる。これらの状況について、日本の情報プライバシー権の観点からの分析・提案を行う。
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Causes of Carryover |
2023年9月まで在外研究に行っていたことから、当課題と接続する国際共同研究加速基金のほうで関連する費用を支出することが多く、基課題のほうでの支出が少なくなったことを理由に、次年度使用額が生じた。2024年度は基課題に関する国内法にかかる研究を進めたいと考えていることから、残額の使用を予定している。
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Research Products
(2 results)