2019 Fiscal Year Research-status Report
参加形態相互間の役割分担の再構築に向けた序論的・比較法的考察
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19K13551
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 隼 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10756589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 補助参加 / 判決効 / ドイツ法 / イタリア法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31(令和元)年度は、19世紀普通法から現在に至るまでのドイツ法の議論を跡づける作業が中心となった。具体的には、ドイツにおいて現在のような補助参加の制度の大枠が固まる過程を繙いたうえ、特に補助参加の利益に関する学説の展開を追った。その結果、主要なところとしては、既判力に関する訴訟法的理解の定着に伴い、伝統的な法律要件的効力(または反射的効力)の概念がそのままでは維持できなくなり、そこから漏れ出た一定のケースにおける補助参加の利益の説明のために主として証明効にスポットが当たったのではないかという見通しを得るとともに、第三者(他人間)の法関係に関する確認の訴えとの連続性を意識しつつ補助参加(の利益)について考えるという視座の可能性を見いだすに至っている。こうした研究成果については、次年度中にとりまとめて公表する予定である。 その一方で、次年度以降の本格的な研究に向けて、イタリア法の(補助)参加制度についての調査する作業を並行して行い、若干の見晴らしを獲得することができた。補助参加の利益の把握の仕方のほか、任意参加の3形態――主参加、共同訴訟的参加(独立的補助参加)、(従属的)補助参加――、特に後二者の間において一定の役割分担が想定されているように窺われる点など、種々の規律に興味深いものがありそうであるという感触を抱いているが、これらの点を含めたより詳細な研究およびその成果の公表は次年度以降の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ法の議論をひととおり見直すことができ、これについては論文公表に向けた準備が着実に進められている。次年度からは徐々にイタリア法に軸足を移すこととなるが、必要と見込まれる文献の収集・講読はすでに一定程度済ませており、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、次年度は主としてイタリア法の補助参加に関する議論に目を向ける予定である。先行研究の乏しい分野であるうえ、昨今の情勢(新型コロナウイルスの感染拡大)の影響もあって、難航が予想されるが、可能な範囲でイタリアの研究者の協力を仰ぎつつ、慎重に研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
年度途中において、「若手研究における独立基盤形成支援(試行)」に基づく追加交付決定を受け、そちらを主に使用したため、多くの次年度使用額が生じた。これについては、必要な図書の購入のほか、情勢(新型コロナウイルスの感染拡大)が落ち着き次第、追加調査等のための旅費に充てる予定である。
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