2022 Fiscal Year Annual Research Report
国際比較による『利得禁止原則』の見直し~ドイツ・日本・そして東アジア~
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19K13572
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
濱口 弘太郎 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (50756319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 損害賠償 / 利得禁止 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 具体的内容 当初の研究計画においては、ドイツのマックスプランク外国私法・国際私法研究所における在外研究や中国・ベトナムを訪問し、現地で調査を行うことを予定していた。しかしながら、コロナ禍により、これらの研究を行うことはできなくなり、文献調査を主体とする国内での研究に専念することとなった。 これらの研究の結果、2022年度には、①損害賠償法における「利得禁止」(藤原正則ほか『時効・民事法制度の新展開 : 松久三四彦先生古稀記念』)、②重複保険に関する東京地裁令2.6.22民10部判決の評釈(判例評論761号)、③自賠法16条1項に基づく被害者の請求権の一部が労災保険給付によって国に移転した場合において、保険会社が国の請求を受けて、これに対して弁済を行うことは有効な弁済になる旨を判示した最判令和4年7月14日(TKC文献番号25572248)の評釈(名経法学46号)を掲載することができた。 2 意義及び重要性 上記文献のうち、本科研との関係でもっとも重要なものは①である。①はStephan GregorのDas Bereicherungsverbot(2012年)の議論を紹介しつつ検討を行い、利得禁止を検討する上で、損害と利益の異質性を前提とすべきであるとの結論に至った。わが国では、損益相殺は、原状回復の裏返しであるなどと解かれるが、不法行為等の損害賠償における原状回復は被害者が蒙った損害を回復するための原理であり、利益を加害者に移転する原理ではない。このことは今後の損害賠償法を検討する上で重要な事項であると思われる。
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