2019 Fiscal Year Research-status Report
全国紙の論調は極性化しているかー計量テキスト分析によるアプローチ
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19K13607
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
細貝 亮 早稲田大学, 政治経済学術院, 客員准教授 (30582259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内容分析 / 極性化 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国紙の報道の違いを数量化することが本研究の目的であるが、本年度の成果は以下にまとめられる。第一に、パイロットスタディとして2つの全国紙のいわゆる「共謀罪(テロ等準備罪)法案」に関する報道(約450件)を分析した。教師あり学習の手法を用いた分析の結果、ある程度の確度で2紙の記事を識別できることが判明し、当初の期待通り、報道の違いを数量化できるとの展望が得られた。第二に、複数ある教師あり学習の精度を比較した。3つの代表的な手法で比較分析したところ、際立った違いは見られなかったものの、わずかにサポートベクターマシーンの精度が高かった。第三に、分析に利用する単語に制限を課したところ、精度が上昇した。これも複数の代表的な手法を試したが、本研究では、先行研究ではあまり用いられてこなかったカイ二乗値に基づく選別が有効であり、また単語の制限が上記教師あり学習の手法選択以上に大きな影響を与えるとの暫定的な結論に至った。 上記した手法が他のトピックスでどの程度適用可能か検証の必要がある。「共謀罪(テロ等準備罪)法案」は、利用単語の違いから報道の違いを数値化する、という本研究の典型例ともいえるトピックスであった。このトピックス以外でもいくつのかの予備分析を行っている(「原発再稼働」「桜を見る会」「森友加計問題」)が、精度が安定しない。今後さらに分析対象を広げ、知見を一般化する必要がある。 この他、従来から行っていた内容分析の手法に関する勉強会を開催し、本研究で利用している機械学習手法についてフィードバックを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
いくつかの予備分析において当初期待したほどの精度が得られず分析の結果も安定しなかったため、上記したような複数手法の比較や単語制限の効果検証を行うことにリソースを割くことになった。 また年度終盤に予定していた集中的な資料収集もコロナウイルス感染症拡大に伴う大学への立入制限措置により困難になってしまった。本報告書の執筆時点でも大学図書館の利用ができず、また再開の目処も示されていないため、必要なデータや文献を収集することができない。コーディング作業を依頼していた学生アルバイトの雇用もストップしている。これにより研究活動に著しい遅れが生じつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初の目的であった新聞報道の極性化の数量的な検証を進める予定であるが、上記のような研究リソースの制限から規模が縮小される可能性がある。そのため、憲法改正、原発問題、共謀罪(テロ等準備罪)法案等、イデオロギーな違いが大きいと予想され、報道量が多く、最近の事例を優先的に収集し分析を進める。最近の事例(本研究がひとつの区切りとしていた2012年以降の報道)については予定通り収集できているため、当該データを用いた分析を進め、学会あるいは研究会で発表を行う。 一方、研究リソースの制限がこれからも続くようであれば、研究の方向性の変更を視野に入れなければならない。具体的には、共同研究者と進めている、新聞購読と政治行動の実証分析に研究へリソースを移すことを検討する。またこれとは別に、世論調査データを用いて進めている、メディア(新聞、テレビ含む)の選択的接触と政治情報の排他性に関する計量分析も移行の選択肢となる。いずれも現代日本における新聞メディアの極性化明らかにするという本研究と関連が深く、多面的なアプローチでこの課題の望むことになろう。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由として以下3つの要因がある。第一に5月から8月に自己都合で休職した。第二に、利用した分析の精度が期待したほどでなかったため手法の精緻化に予想外に時間がかかった。第三に、コロナウイルス感染症拡大に伴う研究リソースの大幅な制限によりアルバイト人件費の支出が見込みを大幅に下回った。 コロナウイルス感染症拡大の影響は執筆時点でも続いているが、研究リソースの回復を待ち、初年度の人件費、旅費を次年度でまとめて消化する予定である。
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