2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢期のリスクと資産に対する社会保障の役割について
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19K13725
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
菅野 早紀 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (70755537)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢者の経済状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者の資産・経済状況と社会保障制度の関係について、実証面及び制度面から研究を行なっている。特に、①医療、②介護、③家族形態の変化、④自然災害、の4つのリスクに着目し、それらの変化が高齢者の資産や経済状況にどのような影響を与えたかを分析する。さらに、それらのリスクについて社会保障制度が高齢者の資産や経済状況にどのようなリスク軽減機能を果たしているかを分析する。 二年目である2020年度は、②介護と④自然災害がもたらす高齢者の主観的幸福度についての研究を行なった。②介護の研究については、前年度の2019年度に書籍として出版したオランダの介護政策を元に、日本とヨーロッパ諸国の介護制度の違いが、家族介護の時間や家族介護者の負担感に違いを生み出しているかを明らかにする。日本とヨーロッパ15カ国の高齢者を対象とした個票パネルデータを用いて、各国の介護制度と家族介護の状況を調査し、介護制度が家族介護の時間や介護者のメンタルヘルスに与える影響を分析している。現在、国際学術雑誌への投稿に向けて、執筆中である。 ④自然災害がもたらす高齢者の主観的幸福度と経済状況についての研究については、2011年の東日本大震災の被災者を含む個票パネルデータを用いて、被災状況別の主観的幸福度と経済的支援の効果を検証している。男女で比較すると、女性被災者のほうが金銭的支援を受けたことで主観的幸福度が統計的有意に増加したが、男性は主観的幸福度を減少させていたことがわかった。これは金銭的支援を受けるほど甚大な被災状況だった可能性を示唆している。一方、男性でも家屋の倒壊状況が半壊程度でかつ金銭的支援を受けた場合は、主観的幸福度が統計的有意に増加したことがわかった。現在、国際学術雑誌への投稿に向けて、執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大によるオンライン授業への対応から、教育に割く時間が増えたため研究時間が予定より減少した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる2021年度は、上記論文を完成させ、国際ジャーナルへの投稿を行う。現在の論文が終わり次第、新しいテーマの論文に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に海外の学会に参加を計画していたが、それがかなわなかったため。
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Research Products
(1 results)