2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13737
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
都築 幸宏 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00801599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デリバティブ / オプション / 無裁定 / 資金調達コスト / 優複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は無裁定理論とフィルトレーション拡大の理論の調査を行った。 前者は、"The Mathematics of Arbitrage (Freddy Delbaen, Walter Schachermayer, 2006)"をもとに関連する論文を調査し、後者は"Random Times and Enlargements of Filtrations in a Brownian Setting (Roger Mansuy,Marc Yor,2006)"を参考にした。 これらの先行研究の調査から、バリア・オプションのモデルに依存しない優複製の研究における優複製の最良性に関する証明の着想を得た。これは優複製戦略に関する下限と確率測度に関する上限が一致することの証明であるが、確率測度の構成にフィルトレーション拡大の理論を用いたもので、既存の証明の別証明を与えるものである。この方法では、ウィナー測度をもとに優複製が完全な複製であるような事象をフィルトレーションに加え、原資産の価格過程が明示的な確率微分方程式として導出される。解も明示的になるため、デリバティブの価格以外にも関連する量が計算可能である。特に、特別な場合の極限を考えることで、Dufresneの結果の特別な場合の別証明を得た。Dufresneの結果とは、ブラウン運動の経路の積分の分布に関する定理で様々な証明が知られている。 またフィルトレーション拡大の理論から、資金調達コストを考慮したデリバティブ価格のモデル化の着想を得た。これは、資金の調達者と提供者の間で情報が異なることにより、それぞれが異なる半マルチンゲール過程を想定するようなモデルである。大まかな考えは研究初年度と同じものであるが、今年度の調査によって、より具体化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は無裁定理論とフィルトレーション拡大の理論の研究を行った。これは申請時の計画や昨年度の「今後の研究推進方策」のとおりであり、このため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前半に2020年度に着手したモデル非依存な優複製の最良性の研究を、後半にMalliavin calculusの技術習得を行う。 前者は様々な種類のバリア・オプションやルックバック・オプションに対しての理論の拡張とDufresneの結果の別証明の完成を目標とする。さらに余裕があれば、Dufresneの結果以外のブラウン運動の経路に関する積分の分布についての研究も行う。Dufresneの結果のほかにも、このような積分の分布は広く研究されており、多くの結果が知られている。優複製の理論から新たな結果を導くことができれば価値があるが、既存の結果の別証明を得ることでも、一見関係のない理論を関連付けるという意味で有意義な研究であると考えられる。 Malliavin calculusの技術の習得はインサイダーモデルの理論の理解やモデルの構築を目的とする。この技術を用いれば、予測過程に関する確率積分やGirsanovの定理を扱うことができ、フィルトレーションを拡大した場合の確率解析に必要である。 2022年度は、前年度までに習得した基礎的な技術をもとに、資金の調達側と提供側がそれぞれ想定する価格過程をモデル化し、資金調達コストを考慮したデリバティブ価格を導出する理論を構築する。
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