2019 Fiscal Year Research-status Report
エスニック・ビジネスの地域的展開に関する都市社会学的研究
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19K13930
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Research Institution | Kobe Yamate University |
Principal Investigator |
八木 寛之 神戸山手大学, 現代社会学部, 講師 (90781386)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エスニック・ビジネス / 商店街 / 都市社会学 / 繁華街 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大都市外国人集住地域におけるエスニック・ビジネスの地域的集積と展開について、民族(エスニック)関係に着目した都市社会学的研究をおこなう。「コリアタウン」や「チャイナタウン」などで、エスニシティを顕在化させた地域活性化が隆盛する現代の日本社会において、エスニック・ビジネスが地域社会構造との関わりのなかでどのように展開しているのか、申請者による実態調査をもとに明らかにする。対象地域として、大阪市内の2箇所の地域(大阪市生野区・中央区)を取り上げ、大都市インナー・シティと都心地域という地域空間構造の差異を視野に入れた比較研究を実施する。その際、「ニューカマー」としての韓国人/中国人新華僑、「オールドカマー」としての在日韓国・朝鮮人/中国人華僑、そして「日本人」との民族関係に焦点をあてた事例研究を実施する。 2019年度は、エスニック・ビジネスと商店街活動の関係性および、都心繁華街地域における多文化共生の実態を明らかにするためのフィールドワークに着手した。大阪市生野区生野コリアタウンでは、商店街会長(オールドカマ―)、日本人商業者、そして商店街組織の事業受託業者らへの聞き取り調査を実施した。また、大阪市中央区島之内では、外国にルーツをもつ子どもたちを支援するボランティア活動への視察および代表者への聞き取り調査をおこなった。 また本年度では、これまでの生野コリアタウンにおける商店街活動の実態調査の知見をまとめた論文、および、島之内地区における地域コミュニティと多文化共生の実態について考察する論文の執筆をおこなった。なお、両論文とも刊行は2020年度の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗はやや遅れていると考える。理由は以下のとおりである。 当初の研究計画では初年度は、次年度以降の本格的なフィールドワークを実施するにあたっての準備作業を中心におこなう予定であった。その意味において、生野コリアタウンにおける商店街活動の中心的な人物のへの聞き取り調査を実施することができたのは、次年度以降の調査方針やインフォーマントへつなぐという意味において有意義であった。しかしながら、当初想定していたニューカマー商業者への調査については、両地域とも不十分であった。 他方で本年度は、以前から両地域において実施してきたフィールド調査の結果をまとめた論文を2本執筆する機会を得た。これは当初の研究計画には盛り込まれていないものであったが、これまでの研究で得られた知見を整理し、本研究での調査研究課題を導出するうえで意義のある機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、両地域でのフィールドワークを引き続き実施していく。とくに、ニューカマー商業者へのインタビュー調査を進めていく予定である。ただし、目下コロナウイルス感染症の影響の只中において、とりわけニューカマー商業者を取り巻く社会的・経営的状況の急激な変化がみられる。このため、調査手法や調査対象者の選定・紹介について柔軟な対応をおこなう必要があると考える。 また、フィールドワークと並行して、エスニック・ビジネスに関する国内外の研究の整理を引き続きおこなう。とりわけ経済地理学の分野における先行研究をカバーし、社会学的な問題関心との接点を見出す作業をおこなう。
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Causes of Carryover |
インタビューデータの文字起こしにかかる費用や人件費が当初予定よりも安くなったため。 本年度の調査地への交通費およびインタビューデータの文字起こしにかかる費用に使用する。
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