2021 Fiscal Year Research-status Report
History of Phrenology in Modern Japanese Education
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19K14063
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
平野 亮 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (40636429)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生理心学(生理的心理学) / 養生/衛生 / 進路指導 / 自分探し / 心の能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,申請書の「研究の目的」に示した3つの課題のうちの2つ目「骨相学者で京都商業学校校長だった高橋邦三の言説研究を足掛かりとした考察」に,前年度より継続して,取り組んだ。成果は大きく次の2点である。 (1)東京大学附属総合図書館ならびに東洋大学井上円了哲学センターでの史料調査 当初2020年度に予定していた現地調査について,当年度の成果を踏まえて再計画し,より実りある形で実施することができた。東大総合図書館では,調査支援スタッフの協力も得て,高橋邦三が収集した骨相学原書コレクションを引き継ぎその死後に東京帝国大学に蔵書を寄贈した,英文学者・永峰秀樹の「旧蔵資料」を閲覧した。所蔵印や書き込み,寄贈印などの調査から,高橋蔵書であったことの推定を始めとして,図書館の記録上も判然としない事柄のいくつかについて解明することができ,OPACの充実にもささやかながら貢献することができた。井上円了哲学センターでは,センタースタッフの手厚い協力を得て,円了が同窓生として高橋の名を記したノートや,『東洋哲学』に掲載された最晩年の論考などが発見された。東洋大学の前身の哲学館で英語の非常勤講師も務めた高橋だが,これまで井上円了研究においては注目されることがなく,その進展にささやかながら貢献することができた。 (2)論文の執筆・投稿 以上の2年にわたる調査結果について,3本の論考を執筆し,投稿することができた。内容は,①高橋邦三の生涯,②その骨相学言説,③その収集した骨相学書,に関してである。研究課題「近代日本における〈骨相学〉の受容と展開に関する教育史的研究」において,2019年度から20年度にかけて取り組んだ俯瞰的研究に対し,より個別具体的な相における当史の一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では2年目の終わりまでの論文執筆を考えていたが,新型コロナウイルス感染症の収束もなかなかならず,結局3年目での作業となってしまったため,進捗状況は「やや遅れている」とした。 しかし,上記の通り,1年延期したことによって調査計画を向上することができたため,成果としては,結果的にはより良いものになったのではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に続き,2つの研究を併行する。 ① 高橋邦三に関する研究について,すでに所蔵確認済みのものもありながらこれまで調査できていない,県立図書館をはじめとする新潟(長岡)所在の史料の現地調査を実施する。 ② 文部省百科全書『教導説』(1873)とその原書の読解に,引き続き取り組む。内容面では,これまでの研究でその影響がより明確になってきた「能力」概念に加えて,三育(知徳体)説にも注目しながら分析を進め,実態面では,師範学校での使用や影響について先行研究を参考にしつつ意識的に調査を進める。
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Causes of Carryover |
計画していた出張が,新型コロナウイルスの感染状況により,実施できなかったため。 使用額は主として新潟出張で使用し,いくらかを最終年度の整理にかかわる経費に使用する予定。
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