2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14174
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
島田 浩二 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (00711128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育 / 子育て / 保育 / 社会神経科学 / 社会脳 / fMRI / 脳イメージング / 文化進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育者の教育行動は、学習者の模倣行動と同等に累積的な文化進化の維持や革新にとって重要な役割を担っている。本研究課題では、大人(教育者側)から子ども(学習者側)への教育行動が、学習者としての子どもの知識表象の獲得の支援といった利他的側面(従来の理論的枠組み)を越えて、教育者の大人自身の知識表象の再帰的強化といった互恵的側面を持っているという仮説について、認知神経科学的アプローチによる検証に取り組み、教育能力の新たな機能的役割(可能性)を探究することを目指すものである。 本年度は、研究①として、典型的な教育者である子育て中の養育者を対象に、大人から子どもへの教育行動に関与する神経基盤の解明に取り組んでいる。子どもにモノの名前を教える(対子ども)条件と大人にモノの名前を教える(対大人)条件を設定し、それらの条件で教えているときの脳機能データ解析の結果、腹内側前頭前野などが対子ども条件で、対大人条件に比べて選択的に関与することが見出され、子どもへの教育行動に関与する神経基盤の一端が明らかにされた。また、研究②として、子どもへの教育行動を通した知識表象の再帰的強化の心理学的実在性およびそれを支える神経基盤の解明に取り組んでいる。研究①と類似した実験パラダイムを用いて、対子ども条件と対大人条件を設定し、それらの条件で教えているときの脳機能データ解析や、教えたモノの記憶表象を評価する偶発的な潜在記憶テストのデータ解析を行っている。現在、脳機能データの解析中であるが、偶発的潜在記憶テストに関して、対照条件に比べて、対子ども条件ではテスト指標がより高かったが、一方、対大人条件ではそうではなかった。その結果は本研究仮説を部分的に支持するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究①では成果を国際学術雑誌に報告した。研究②では、研究①のエビデンスも関連づけながら、脳機能や認知行動のデータ解析に取り組み、仮説を部分的に支持する結果を見出す段階まで進んでいる。その点で、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、認知神経科学実験のデータに関する詳細な解析をさらに進めていく。また、向社会的な教育行動に影響を与える要因として、過去および現在の養育ストレス状態などを組み合わせた関連解析にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
次年度は、認知神経科学実験の実験装置の使用料、実験参加者への謝金などを、本年度繰り越した金額で充填する予定である。
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Research Products
(2 results)