2020 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症の成人女性の「社会適応」に関する臨床心理学的研究
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19K14441
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
砂川 芽吹 東北大学, 教育学研究科, 助教 (70823574)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 女性 / 社会適応 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(以下,ASD)の女性は,表面的には対人コミュニケーションスキルを獲得し,社会生活において一見問題がないように見えることも少なくない。しかしながら日々の生活に目を移すと,女性に対する社会的期待を受けて,障害特性から困難や苦痛を抱くことも多いと考えられる。ASD者の支援のあり方は,症例数の多い男性例をベースとしている現状がある。そこで本研究では,ASDの女性の「社会適応」に着目し,女性として生きる日々の生活に即した困難を明らかにしたうえで,女性のライフサイクルに沿った具体的な支援のあり方を検討することを目的とする。 令和2年度は,ASDの女性の主観的な経験を扱った英語論文の質的システマティックレビューを行った。過去20年間に英語で刊行された,ASDの女性当事者に対する質的研究を対象とし,最終的に抽出された19編の論文について,その特徴および各論文で示された結果の主なテーマをまとめた。レビューの結果については,査読付き論文である『自閉症スペクトラム研究』に投稿し採択された(令和3年度掲載予定)。 また,すでに実施した女性当事者10名に対するインタビュー調査について質的な分析を進め,本年度はうち2名に対してオンライン上で追加のインタビューを行った。引き続きデータ分析を行い,ASDの女性の「社会適応」の認識に関する理論モデルを検討していく。分析が終了次第,学会等で結果の発表や,論文を執筆して国内外の雑誌に投稿する。 加えて,就労移行支援事業所および当事者会の協力を得て,発達障害のある成人の「社会適応」の認識に関する選択式および自由回答式の項目を含むアンケート調査を実施した。現在は回収を終え,分析準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,女性当事者に対してグループインタビューを実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染症拡大の状況に鑑み,対面での実施は困難だと判断された。そこで本年度は,まずはASDの女性の主観な経験を扱った文献レビューを行った。それによって本研究課題を遂行するにあたり,研究設問や研究方法上の課題をより具体的に明らかにすることができた。 加えて,すでに実施済みであった予備的なインタビュー調査について質的な分析を行い,追加のインタビューを行ったうえで理論モデルの検討を重ねている。しかしながら,その妥当性の検討がまだ不十分であるため,専門家や当事者等の協力を得て結果の精緻化の必要がある。 また,就労移行支援事業所や発達障害の当事者会等の利用者を対象に,「社会適応」の認識に関するアンケート調査を実施した。しかしながら感染状況の拡大に伴いいずれの施設も利用者が減少しており,当初想定したデータ数を集めることができていない状況である。現在までに得られたデータについては分析を進め,量的な検討に加えて,自由回答式の項目について質的な検討を組み合わせて分析を行う。妥当性の観点から,データ数が不十分であると考えられる場合には,本年度にも追加で調査を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の夏ごろをめどに,インタビュー調査で得られたデータの質的な分析を終え,論文としてまとめる。併せて倫理審査専門委員会への申請の準備を行う。 倫理審査委員会において承認が得られたのち,インタビューで得られた知見をもとに,ASDの女性の適応能力に関して,その障害の程度と他の特性との関連を明らかにすることを目的に,質問紙および心理検査を利用した調査を実施する。併せて,①ASDの男性,②一般の女性に対しても同様の調査を行い,その比較からASDの女性ならではの特徴を検討していく。ただし対面での実施が困難な状況であった場合には,オンライン上での調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はグループインタビュー調査を実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染症拡大に伴い協力者を集めることが困難な状況となり,特に謝金として使用する予定であった助成金はほとんど使用しなかった。また,同様に学会や研究会等への参加を予定して旅費を見込んでいたが,それらも実際に現地で実施されたものがなかったため,本年度は旅費の使用がなかった。 次年度も感染状況が見通せないため,特に年度前半はオンライン調査など,非対面型の調査を実施する。後半以降は,状況をみながら十分な感染対策をとったうえで可能な範囲で心理検査などの物のやり取りが生ずる検査や,対面型のインタビュー調査を実施することを検討する。
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Research Products
(4 results)