2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Japanese Version of the Reflective Functioning Questionnaire
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19K14459
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
荻本 快 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (00746612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メンタライゼーション / 内省機能 / RFQ / 境界性パーソナリティ障害 / MBT / メンタライゼーションに基づく治療 / 子どものためのMBT / 質問紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
境界性パーソナリティ障害(BPD)への効果的な治療法が、英国Anna Freud National Center for Children and Families(アンナフロイトセンター)の精神分析家・臨床心理学者であるピーター・フォナギー氏と精神科医であるアンソニー・ベイトマン氏によってメンタライゼーションに基づく治療Mentalization Based Treatment(MBT)として考案され、世界的に注目されている。メンタライジングとは、自己と他者の心理状態を振り返る能力のことであり、その操作的な表現がリフレクティブ機能(内省機能・省察機能)である。このリフレクティブ機能を測定する質問紙であるReflective Functioning Questionnaire (RFQ)がフォナギー氏とライトン氏らによって開発されている。申請者はライトン氏と共に日本版RFQの原案を作成した。 2020年5月には、子どものMBTのスーパーヴァイザーであるガヴィニオ重利子氏と共に、MBTと子どものMBTに関するオンラインの国際学術集会『MBT・MBT-C:その実践とスーパーヴィジョンを考える』を開催した。この国際学術集会にはMBTの開発者であるベイトマン氏とMBT Scotlandのリンダ・トレリビング氏、そして子どものMBTの開発者であるニック・ミジリー氏とカリン・エンシンク氏らが出演し、イギリス、スコットランド、スイス、カナダ、日本を同時にオンラインでつなぎ、参加者は300名を超えた。 申請者はMBTの開発者であるベイトマン氏と、トレリビング氏の協力のもとMBTの臨床実践研究とRFQのパイロット研究をおこない、第38回日本集団精神療法学会でグループのMBT(MBT-G)の実践例を発表し多くの視聴回数を得た。自己内省機能に関する論文が学術雑誌に掲載され、関連する書籍を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年5月にオンライン国際学術集会『MBT・MBT-C:その実践とスーパーヴィジョンを考える』をガヴィニオ重利子氏と共に開催した。この学術集会において申請者はリンダ・トレリビング氏の協力を得ておこなったMBT個人療法の臨床実践研究を発表し、MBTの開発者であるアンソニー・ベイトマン氏の指定討論を受けた。MBT-Cの開発者の一人であるカリン・エンシンク氏がガヴィニオ重利子氏と共におこなっているMBT-Cの臨床実践が発表され、MBT-Cの開発者であるニック・ミジリー氏が討論をおこなった。この学術集会は日英のバイリンガルでおこなわれ、参加者は日本国内にとどまらず300名を超えた。日本語圏でのメンタライゼーションに関する実践研究を国際的に発信する端緒となったと言えよう。 2020年中に申請者はMBTの個人療法に加えてMBTの集団療法(MBT-G)の実践とRFQのパイロット研究を開始した。このMBT-Gの実践は、英国アンナフロイトセンターが主催するMentalization-Based Treatment Certification Courseで発表され、開発者であるベイトマン氏の助言を得ただけでなく、世界の実践家による討議に付され、多くの有益なコメントを受けた。日本集団精神療法学会第38回大会において発表し、視聴回数は200回を超えた。トレリビング氏は日本の臨床家に向けてMBTのスーパーヴィジョングループを立ち上げ、申請者は通訳と運営に携わっている。 これらの実践研究はコロナ禍のなかでおこなわれた。その知見は一般公開講座『きたやまWebinar:愛について』(北山修氏講演)の申請者の指定討論において紹介され、900名を超える視聴者が参加した。2020年度末に木立の文庫から公刊された書籍「コロナと精神分析的臨床:『会うこと』の喪失と回復」(荻本快・北山修編著)にも収録されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療現場をフィールドにした調査研究を行うことが困難な状況が生じた。2021年度は新型コロナウイルスの感染抑制の状況を見ながら、日本語版RFQをBPDと診断された患者に対して実施する。その際には、医師を通した患者への間接的な依頼だけでなく、オンラインで質問紙を実施することも検討していく。質問紙の結果について、因子分析を行い、因子構造と内的整合性、再検査信頼性を検討する。そして日本語版RFQをToronto Alexithymia Scale等の尺度と共に実施、構成概念妥当性を検討していく。日本語版RFQの妥当性と信頼性を検討する際にはオリジナル版を作成したペーター・フォナギー氏やパトリック・ライトン氏とのディスカッションを行うと共に、国内の研究者との連携を広げていく。 2021年6月には、ガヴィニオ重利子氏の協力のもと、マーティン・デバネ氏(University College London)を招聘し、国際シンポジウム「発達障害とメンタライゼーション」を開催する予定であり、リフレクティブ機能と発達障害の関連について議論される予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大と医療現場の逼迫を受けて、医療現場で予定されていたBPDの患者に対する質問紙調査が今年度中は不可能になった。そのため、 調査を実施するための旅費、謝礼等を支出しなかった。次年度は新型コロナウイルスの感染抑制の状況を見ながら、BPDの患者に対する質問紙調査を実施してい く予定である。
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Research Products
(29 results)