2020 Fiscal Year Research-status Report
躊躇行動としての食物新奇恐怖反応を司る脳内メカニズムの解明
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19K14473
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
篠原 恵介 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (10803603)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネオフォビア / 情動 / 食行動 / ラット / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
げっ歯類 (ラット) を対象として、躊躇行動としての食物新奇恐怖 (ネオフォビア) に関わる脳内メカニズムを解明することを目的とした。具体的には、新奇味溶液 (0.5%サッカリン溶液) の摂取時におけるラットの躊躇行動を評価するため、摂取時の姿勢変化を測定する方法を確立するための実験を実施した。本研究課題の予算で導入したカメラ2台同期システムを用いて、実験装置内で味溶液を摂取するラットを撮影し、分析した。新奇味溶液を呈示した際に、呈示の初期には摂取時に伸展姿勢が見られたが、やがて身体を屈曲させながら摂取する行動が観察された。伸展姿勢は、不安様行動の測定課題を遂行中のラットで見られ、動物の躊躇行動を反映するとされるが、新奇味溶液の摂取時に示すという報告はこれまでされておらず、画期的な結果であるといえる。前年度 (2019年度) では一度に撮影できる時間に限界があり、十分な標本数を確保できなかったが、当該年度 (2020年度) の予算により、長時間撮影を可能とするための設備を整えた。また、前年度までに得られた結果をまとめて学術論文として公表した (Shinohara and Yasoshima, 2021)。この実験では、従来の測定法 (摂取量比較) によって、不安などの負の情動表出に関わるとされる腹側海馬の機能が嗅覚性新奇恐怖に関与する可能性が示された。食物の呈する匂いへの反応も食物新奇恐怖の特徴を説明する上で重要であるが、嗅覚性新奇恐怖の研究例は少なく、未解明な点が多かった。本実験の結果は、味と匂いの複合刺激としての食物に対する新奇恐怖の生起メカニズムを解明するために重要な知見と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
溶液摂取中のラット姿勢変化を解析するための測定上の問題を解決し、実験を進めるための実験設備を整えた。当初は、味覚性および嗅覚性新奇恐怖を姿勢変化に基づいて評価するための行動実験を当該年度 (2020年度) 中に実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による研究活動の制限により、実験を十分に実施できなかった。そのため、進捗はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験設備は整えられているので、研究活動の制限がなければ、味覚性および嗅覚性新奇恐怖を姿勢変化に基づいて評価するための行動実験を実施し、結果をまとめて学術論文として公表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大によって国内外の学会がオンライン形式になったことから、旅費の支出が予定より少額になったため、未使用額が生じた。すでにいくつかの学会は次年度もオンライン開催を予定している。当該年度に生じた次年度使用額は、オンラインでの成果発表をより円滑にするための通信設備の整備に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)