2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K14521
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
國川 慶太 宇都宮大学, 共同教育学部, 助教 (10813165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リッチフロー / 熱方程式 / 調和写像流 / 熱核評価 / 幾何学的フロー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、リッチフローなどの幾何学的フローに沿った熱方程式および調和写像流の解の挙動について研究を進め、2本の共著論文を執筆した。前年度の実施状況報告書でも述べたように、リッチフローは本来の研究課題である「平均曲率流のII型特異点」とは直接的な関係がない。しかし、平均曲率流とリッチフロー、そして熱方程式では共通した問題意識があり、本年度の研究成果もそのようなところから生まれている。本年度1本目の論文では、幾何学的フローに沿った調和写像流に関する増大度条件付きLiouville型定理を示した。これはChoiによる古典的なLiouville型定理の改良版であり、特に増大度条件の観点から新規性があると言える。2本目の論文では、幾何学的フローに沿った熱方程式のガウス型熱核評価を弱い曲率条件の下で導出した。これは、Bamler-Zhangがリッチフローに対して得ていた結果を、より一般の幾何学的フローに拡張したものとなっている。一般の幾何学的フローへの拡張に際して、Mullerが導入したとある微分量の非負性がキーポイントとなる。Mullerの微分量が非負であれば、Bamler-Zhang理論がすべてうまく拡張できると発見したところに、この研究の新規性や価値があると考えている。また、ガウス型の熱核評価を導出する過程で、幾何学的フローに沿った(共役)熱方程式に関する平均値不等式も導出することができた。平均値不等式の応用として、熱方程式の解空間の有限次元性などを導けたら面白い。これについては研究を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究内容について、課題である平均曲率流と直接的な関係を見いだすことは現在のところできていない。しかし、Colding-Minicozziの最近の研究により、平均曲率流の特異点解析には熱方程式を調べることが有効であることがわかっている。リッチフローと平均曲率流は多くの類似点をもつため、リッチフローなどの幾何学的フローに沿った熱方程式の挙動を詳しく調べた本年度の研究やそこから得た知見が、今後平均曲率流の特異点解析にも役立つ可能性はある。この意味で、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、Colding-Minicozziは平均曲率流の古代解に沿った熱方程式の解空間の次元が、適切な増大度条件の下では有限次元であることを示した。このような性質をLiouville性というが、これはLiouville型定理の拡張にもなっている。彼らは熱方程式のLiouville性の帰結として、平均曲率流の古代解、すなわち特異点モデルの余次元をエントロピーを用いて評価することに成功した。一般に、余次元の高い平均曲率流は扱いが難しく長年進展がなかった中、Colding-Minicozziらの研究は1つのブレイクスルーとなった。 一方、我々の最近の研究ではリッチフローなどの幾何学的フローに沿った熱方程式のLiouville型定理の研究を推し進めてきた。リッチフローと平均曲率流の類似点に着目すれば、リッチフローの古代解に沿った熱方程式に関するLiouville性が成り立つか否かを問うのは自然な発想である。しかし、現状この問題は未解決である。現在すでに研究に取り掛かっているが、Colding-Minicozziらの手法のアナロジーは通用しなそうだということはわかってきた。リッチフローの場合には、改めて独自の手法を開発しなければならなそうである。例えば、リッチフローに沿った熱方程式に対する適切な形の平均値不等式が必要になると予想しているが、これもまだ得られていない。ただ、我々の本年度の研究成果である熱核評価を導出する過程で得た平均値不等式に関する知見が役立つかもしれないと期待している。平均値不等式以外にも解決しなければならない問題はいくつかあるが、もしリッチフローの古代解に沿った熱方程式のLiouville性に関して新たな手法が開発できれば、今度は逆にそれを平均曲率流の特異点解析に生かせないか考えてみたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる感染拡大の状況が長引いており、本来想定していた研究集会への現地参加、研究打合せ等が実施できなかった。次年度は、全国的な感染状況の様子を見つつ、研究集会への参加や主催を積極的に考えていく。
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Remarks |
國川慶太のホームページ http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/kunikawa/index.html 査読中や掲載確定済み出版準備中の論文リストを掲載しています。
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Research Products
(8 results)