2020 Fiscal Year Research-status Report
「その場観察」手法を駆使したNaNbO3系反強誘電薄膜の動的挙動観察
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19K15032
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
別府 孝介 龍谷大学, 先端理工学部, 助教 (20824882)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非鉛反強誘電体 / 薄膜 / パルスレーザー蒸着法 / エネルギー貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はNaNbO3(NN)系反強誘電薄膜の組成による薄膜構造の変化および,その電気特性の変化について評価を行った.前年度までに(001)SrTiO3基板上に作製したNaNbO3-CaZrO3(NNCZ)薄膜,NaNbO3-SrZrO3(NNSZ)薄膜が反強誘電特性を示すことを見出していた.それぞれの薄膜ではNNの反強誘電相が基板の面内方向と平行(NNCZ)および垂直方向(NNSZ)に優先的に成長していた.そこで,NaNbO3-(Ca0.5Sr0.5)ZrO3(NNCSZ)薄膜を作製した.その結果,NNCSZ薄膜はNNCZ薄膜とNNSZ薄膜の両方の特徴を(反強誘電相が基板の面内方向と平行および垂直方向の両方に成長)有していることが明らかとなった.基板の面内方向と平行なドメインは反強誘電―強誘電相転移に伴うNbイオンの変位方向と電界の印加方向が一致するため,反強誘電相が安定化されやすく,基板の面内方向と垂直な方向に成長したドメインは絶縁破壊電界強度の向上に寄与していると考えている.結晶成長方向を制御することで反強誘電相を強く安定化させることができることを改めて示した.加えて,NNCSZ薄膜のSr/(Sr+Ca)比の依存性についても検討を試みたところ,0.4 ≦Sr/(Sr+Ca) ≦ 0.8の範囲で反強誘電特性を示す薄膜の作製に成功した.Ca-richとなるほどに絶縁破壊電界強度の向上が確認でき,上述の各ドメインの効果を実証したものと考えている.また,NNCZ, NNSZ,NNSZ以外の組成ではNaNbO3-CaSnO3(NNCS)薄膜でも反強誘電特性を示すことが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時における本研究の達成目標は,(1) 高品質NN系反強誘電薄膜の作製手法の確立,(2) NN系薄膜の結晶構造・反強誘電特性とドメイン構造の関係の解明,(3)ドメインの動的挙動を「その場観察」し,その挙動と反強誘電特性との関係を解明する,の3つである.このうち,(1)は前年度の段階で製膜条件のスクリーニングが完了し十分に達成したものと考えている.(2)の結晶構造と反強誘電特性の関係についても,本年度の実績の概要に記載のように,ある程度の知見が得られたものと考えている.しかしながら,本研究の課題名とも強く関連している(3)の動的挙動の観察については未だ成功していない.以上よりやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度も本年度と同様に共焦点レーザー顕微鏡によるドメイン観察を試みていたが,観察することができなかった.当時は作製した薄膜に観察するために十分な膜厚が無かったためだと考えていた.しかし,今年度その点を改善した薄膜を用いてもドメイン構造を観察することができなかった.通常のNaNbO3薄膜ではドメイン構造を観察することができていたため,CaZrO3およびSrZrO3の添加によりドメインが顕微鏡の観察限界以下にまで小さくなってしまった可能性がある.そこで今後は,異種元素の添加量を少なくした薄膜でドメイン構造の動的挙動の観察を行い,反強誘電特性に関する知見を深めていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
本年度のコロナ禍により,学会出張が軒並み中止となり研究の進捗にも影響を及ぼしており次年度使用額が発生した.繰り越し金額分は消耗品および論文投稿費用として充填する予定である.
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