2020 Fiscal Year Research-status Report
植生生体電位を活かした表層崩壊バイオアラームの開発
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19K15089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古川 全太郎 九州大学, 工学研究院, 助教 (70735985)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根系による地盤補強 / 斜面災害 / 植生生体電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物根を生かしたまま,植物根による地盤補強効果と根の生体電位の反応を評価できる原位置一面せん断試験装置を開発した.ビニールハウス内で生育した樹高0.3~1.0mのスギ根系に対して,生育期間を0.5か月~3か月として一面せん断試験を行い,見かけの粘着力の増加による根の補強効果を定量化した.その結果,下記のことを明らかにした.1) せん断面の根の断面積が増加すると,補強効果は指数関数的に増大する.2) せん断試験中のスギの根,茎,葉の生体電位を測定した結果,せん断力のピークの直前で,特に茎の生体電位が激しく変動する.3) せん断前後の生体電位の振幅値の変化割合と根の補強強度には正の相関がある.4) 生体電位の最大振幅値を示す周波数は9割の根系で0.1 Hz以内にみられる.5) 根系の補強強度と根系の最大振幅値vの関係は指数関数で近似できる.6) 直径0.5 mm未満の根系にも補強強度は存在し,せん断面での根系断面積は粘着力に影響を及ぼす. また,申請書に記載する以外の内容でも付随する成果として,法面に樹高0.3m程度のスギ根系を植えた模型斜面(1/20スケールを想定)に対して加振実験を行ったその結果,以下のことが明らかとなった.1) すべての条件において,加振加速度400 gal時に法尻から亀裂が入り斜面の崩壊が生じた.根系数が3倍に増加すると最大水平変位は87%減少した.加速度応答倍率は,根系を含む地盤で最大で23 %抑制される.2) 斜面安定解析により実際に斜面が崩壊した入力加速度400 galで安全率が1以下になるような粘着力を逆算すると,その粘着力は想定した粘着力の60%である.3) 模型斜面の崩壊が生じる数秒前に茎と根の生体電位が増加する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記した2020年度の計画通り,「植生環境をパラメータとした根を含む一面せん断試験」でスギ根系を対象にデータを蓄積し,「根を含むばらつきを考慮した地盤のせん断強度評価式の作成」で根系による地盤の補強効果を定量化した.「せん断変位により発生する生体電位周波数の特定」では,せん断前後の生体電位をそれぞれフーリエ解析することにより,せん断変位により発生する特徴的な生体電位周波数を特定した.
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Strategy for Future Research Activity |
開発した原位置一面せん断試験機の載荷装置を小型化・軽量化し,山間地でも持ち運びが容易にできるように装置を改良する.改良した試験装置を用いて,自生している樹木に対して一面せん断試験を行い,現場で取得した補強効果と生体電位変化の関係について定量化を行う.得られた生体電位データのばらつきを評価できる統計的分析手法を検討する. また,3か月程度模型斜面上で生育させた苗に対して加振実験を行い,根の充実度と補強効果の関係,地盤の変位および根に作用する加速度と生体電位の関係を見出す.
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Research Products
(7 results)