2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Design Process of Stonborough Villa -3DCG Reconstruction of the Sketches-
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19K15198
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
石田 優 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (40822309)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パウル・エンゲルマン / アドルフ・ロース / ハインリッヒ・クルカ / ラウムプラン / ラウムプランニング / 空間構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、感染症拡大に伴い渡航が困難になったことを受けて、ウィーンを中心とする現地調査を実施することができなかったため、これまでに得られた建築家パウル・エンゲルマンが描いたストンボロー邸初期のスケッチ資料から、各スケッチ(平面・立面・外観パース・内観パース)の分類およびそのその特徴について、設計過程の変遷を整理しながら考察の作業を進めてきた。これまでの研究成果で、エンゲルマンの建築的特徴として「三次元的な空間」が、ストンボロー邸を含む一連の建築作品に展開されていることを見出した。 本年度は、エンゲルマンの「三次元的な空間」という発想の源流を把握するべく、エンゲルマンが学生時代に建築家アドルフ・ロースの下で建築を学んでいたこと、そしてロースと協働で建築設計の作業に従事していたことを踏まえ、エンゲルマンに影響を与えた可能性の高いロースの建築的特徴である「ラウムプラン(三次元的な空間構成)」との比較・考察を行なった。具体的には、ロースの建築空間に内在される「ラウムプラン」は、1931年にロースの弟子ハインリッヒ・クルカによって概念化されたものである。しかしながら、エンゲルマンの著作『ADOLF LOOS』(1946年)のなかでは、「ラウムプラン」の用語を用いることはせずに「ラウムプランニング」とing形で表現されていることを確認した。さらに、これまでの近代建築史上に叙述されたロース建築の解釈は、クルカの「ラウムプラン」の概念に寄与するところが大きいが、エンゲルマンの「ラウムプランニング」についても看過することのできない概念であることを指摘した。以上は、2023年度日本建築学会大会(近畿)で発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行によって、現地(ウィーン・オロモウツ)での資料収集が実施できなかった点においては、研究の進行に遅れが生じている。また、当初予定した研究計画から研究範囲を見直し、再構築した研究計画に基づきながら限られた資料・文献のなかでも工夫しながら進めている。そうした状況のなかで、一部ではあるがパウル・エンゲルマンの建築作品および著作を取り上げることで、ウィーンを中心とする近代建築史のなかにエンゲルマンを位置付けした点においては、進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
エンゲルマンの「ラウムプランニング」の概念および言説と建築作品の関連性について分析を進める。なかでもエンゲルマンとロースは深い関係であったことを確認しており、両者の建築作品を分析対象としながら検証していくことが今後の研究の課題である。またこれらの研究成果で見出すことのできた建築的特徴を図化するとともに、グラフィックソフトを用いて3DCGによるデータ整理・分析をおこないながら研究論文・報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、感染症の感染拡大に伴い、予定していた現地調査が計画通りに実施できなかったことにより、旅費の支出ができなかったものである。次年度の使用計画としては、これまでの研究成果を取りまとめ学会論文への投稿のための費用として使用を予定している。
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Research Products
(1 results)