2020 Fiscal Year Research-status Report
Research Productivity and Bureaucracy: Research Evaluation, University Organization, and Strategy of Researchers
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19K15239
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福本 江利子 広島大学, 学術・社会連携室, 研究員 (40835948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 研究者 / 研究 / 生産性 / 評価 / 戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、引き続き研究や研究者における「生産性」の意味と研究者の戦略を主題として、論文執筆と学会発表、そしてこれらを基にしたインタビュー調査計画の推敲に取り組んだ。まず、これから実施するインタビュー調査の基盤となる枠組みについて論文を執筆し、2020年夏に国際誌に投稿した。この論文はまだ出版には至っていないものの、査読過程を経て有益なコメントを多数得るとともに書き直しての同ジャーナルへの再投稿を推奨されたため、早期の再投稿に向けて取り組んでいる段階である。また、2020年度は、3件の学会発表をオンラインで実施した。研究イノベーション学会(2020年10月31日- 11月1日)では、「High risk high gain:公的研究開発資金プログラムにおける関連概念と枠組みの検討」と題し、上記の論文原稿で示す理論的な枠組みについて発表した。この発表では、研究政策の研究者や実務家から、枠組みと調査計画の推敲に有用なフィードバックを得た。また、科学技術社会論学会(2020年12月5-6日)での発表「「ジャーナル共同体」再考:捕食ジャーナルと紀要を位置づける」では、研究や研究者の生産性の意味や研究活動の在り方を規定しうる環境としての学術出版の在り方について、理解の枠組みを提示し議論した。これについては、学会発表後、論文を執筆中である。加えて、Science of Team Science Conference (2020年6月1-4日)でも発表を行った。これらをふまえたインタビュー調査の実施に向けて、研究協力者に定期的に助言を仰ぐとともに、2名の専門家からビデオ通話で助言を得ることにより、より適当なインタビュー計画を作成した。2020年度に研究計画を学内の研究倫理審査委員会に提出し、許可を待っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの主な理由は、理論枠組みやインタビュー調査計画の改善に想定よりも時間を要したこと、新型コロナウィルスの影響による調査法変更の検討などである。当初の予定と比べて遅れてはいるが、学会発表や論文執筆を通じての枠組みの推敲と議論、専門家からの助言などを通じて、インタビュー調査を設計した。これには、3件の学会発表と、1件の論文投稿を含む。論文は、査読において修正後の同ジャーナルへの再投稿を推奨されたため、現在修正中である。また、インタビュー調査開始の遅れについては、研究代表者が研究科に所属していなかったために、調査計画について学内の研究倫理審査を即座に実施できる状況になかったことも関係している。関連部署との調整後、2020年度中に学内倫理審査用の書類を提出し、許可を待っている段階である。この間、理論に関する論文や学会発表に取り組むとともに、インタビュー調査の本調査実施前の情報収集として、公的な研究開発プログラムの設計や運営にかかわってきた実務家・専門家から助言をもらうためのヒアリングを2020年12月に2件実施した。ここで、その現場経験や長年の経験・知識をもとに、研究や研究者の生産性や、公的研究開発プログラムの設計・施行・評価の仕組みなどについて有用な助言を得た。これらを経て、インタビュー調査では、公的な研究開発プログラムにおいて個別プロジェクトの研究代表者を務めた若手研究者に対象を絞ることとなった。慎重に研究の理論的枠組みの検討とヒアリング計画の推敲に取り組む中で、例えば単に生産性と反対の概念に着目して生産性を考察することなど、新たな研究焦点やアプローチを見出しつつある。プロジェクトの主要テーマを維持しつつも、より適切な方向性の模索をふまえ、インタビュー調査の本調査を実施する目途が立った段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も、引き続き、研究と研究者にとっての生産性という主要なテーマのもとに、調査と論文執筆、学会発表に取り組む。2021年度の主要な取り組みであるインタビュー調査については、既に調査の質問票を作成済みである。2020年度末に、インタビュー調査に係る事前の倫理審査に調査計画を提出し、審査結果を待っている状態にある。この計画の許可が下り次第、参加協力者のリクルートとインタビュー調査を開始する。具体的には、公的研究開発プログラム内のプロジェクトで研究代表者を務めたことのある研究者に対し、研究の挑戦性や生産性などについてたずねるインタビュー調査を予定している。当初は対面での調査を予定していたが、新型コロナウィルスの状況を鑑み、すべてオンラインのビデオ通話ソフトを利用してのデータ収集に変更している。インタビューは研究代表者が実施予定であるが、データの整理や分析の作業においては、大学院生等の研究アシスタントの協力を得て迅速に進める予定である。現在も事前の研究倫理審査の結果を待っている状態であるため、許可後すぐに調査や調査後のデータ分析ができるように、分析法等について事前に推敲を進める予定である。インタビュー調査の途中経過または最終的な結果について学会にて発表しフィードバックを得るとともに、2021年度中に論文の執筆も行うことを目標としている。また、2020年度に投稿し、査読コメントとともに返却された論文原稿についても、2021年度の早期の再投稿を目指す。研究の進展に伴い、ジャーナルを含む学術出版の変容など、派生してきた関連テーマについても引き続き論文の執筆と投稿を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生は、主に新型コロナウィルスの影響と、研究計画の遅れによる。新型コロナウィルスの影響で、学会はすべてオンラインでの開催となり、インタビュー調査の推敲に向けた専門家からの助言機会もオンラインでの実施となった。このため、当該年度に旅費は発生しなかった。また、インタビュー調査開始の遅れから、インタビュー調査に係る旅費も今年度は発生しなかった。これらの理由から、予算は主に、書籍の購入、学会参加費、論文原稿の英文校正、Zoomアカウントの使用料などに使用した。次年度においてオンラインでのインタビュー調査環境の整備、そして研究アシスタント等の協力を得ての研究推進を計画しているため、予算の次年度使用が必要である。具体的な使用予定例としては、オンライン調査に係るZoomアカウント費用やヘッドセットとカメラの購入といったインタビュー調査の環境整備のための費用、そして研究アシスタントの助けも得てデータの整理や分析を行うため、パソコンやデータ・ストレージの購入費用、また研究アシスタントへの謝金等が発生する見込みである。これらに加えて、引き続き、学会参加費用や論文の英文校正費の使用を見込む。
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Research Products
(3 results)