2021 Fiscal Year Annual Research Report
アルカリ浴を用いた亜鉛の低電力電解採取に関する基礎的研究
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19K15333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 章宏 京都大学, 工学研究科, 助教 (50816600)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電析形態 / その場観察 / 電解採取 / アルカリ浴 |
Outline of Annual Research Achievements |
現行の硫酸酸性浴を用いた亜鉛の電解採取では消費電力の削減が求められている。これに対し、硫酸酸性浴をアルカリ浴に代替できれば、亜鉛の電解採取に要する電力の大幅な削減が期待できる。そこで、アルカリ浴を用いた亜鉛の電解採取の実用化に向け、当該年度はCuO, NiOまたはCoOを不純物として溶解させたアルカリ浴を用いて亜鉛の電解採取試験を実施し、これらの不純物が及ぼす影響を調査した。 アルカリ浴では亜鉛は多孔質または粉末状に析出しやすく、CuO, NiO, CoOを溶解させた電解浴でも同様な形態の亜鉛が得られた。電析中の水素の発生挙動についても目視では不純物の有無による差は見られず、電流効率の変化も小さいと考えられる。ただし、CuO, NiOまたはCoOを含む電解浴から析出した多孔質な亜鉛は反応性がより高く、洗浄・乾燥後は空気中で次第に酸化された。また、溶解度以上にNiOまたはCoOを添加して24時間以上攪拌後、濾過したアルカリ浴から得られた亜鉛析出物中のNi, Co濃度は数ppm程度と低く、電解後の酸化を防止できれば、電解浴中のNi, Coの除去は不要と考えられる。一方で、CuOを溶解させた電解浴から得られた亜鉛析出物中のCu濃度は2 %程度と高く、電解浴中のCuを事前に除去する必要がある。このようなアルカリ浴のCuの除去方法については亜鉛末を用いたセメンテーションや硫化ソーダの添加などが過去に多数研究されており、十分に可能であると考えられる。 以上のことから、Ni, Co, Cuの除去のために多段の浄液工程を必要とする従来の硫酸酸性浴を用いた亜鉛の電解採取と比較し、本プロセスでは浄液工程をCuの除去のみに簡略化できると期待される。ただし、アルカリ浴から析出した金属亜鉛の損失を防ぐため、析出形態の制御または低酸素雰囲気で取り扱うなど、亜鉛析出物の酸化を防止する必要がある。
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