2019 Fiscal Year Research-status Report
無界面スピントランジスタ実現に向けた導電性酸化物のスピン物性研究
Project/Area Number |
19K15433
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大島 諒 京都大学, 工学研究科, 助教 (10825011)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は異種材料接合界面の無い、無界面スピントランジスタの実現を目的とする。スピントランジスタとは、トランジスタのソース・ドレイン電極を強磁性電極に置換した構造を持ち、ゲート動作に伴う電荷の移動に加え、強磁性電極による電子スピン情報をやり取りする機能を追加した次世代デバイスである。従来のスピントランジスタは強磁性体/非磁性体の接合界面を有し、潜在的に界面でのスピン散乱を伴う構造であった。そこで、本提案では接合界面を排除した素子構造を新規に提案する。チャネルの候補材料である導電性酸化物(SrTiO3, STO)は酸素欠損による強磁性が報告されており、キャリア密度によりその発現を制御できることから、ゲート制御による強磁性/非磁性遷移が可能である。この遷移を用いることで、本質的にスピン散乱要因となる接合界面を一切含まないスピントランジスタ構造を実現できる。 今年度は、STO表面における磁気伝導制御の第一段階として、強磁性電極を用いたSTO表面強磁性の磁化制御に取り組み、表面の磁性に起因すると見られる磁気抵抗の観測に成功した。これにより、STO表面における無界面スピントランジスタ構造の基本構造は完成したと言える。ゲート制御については、イオンゲートを用いたキャリア制御とそれに伴うスピン特性の変化に関する詳細を得るため、先行研究であるPt超薄膜におけるスピン流電流変換についてさらに実験を行い、新たな知見を得ることができ、現在論文投稿を準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STO表面における磁気伝導制御の第一段階として、強磁性電極を用いた表面強磁性の磁化制御に取り組み、表面の磁性に起因すると見られる磁気抵抗の観測に成功した。これにより、STO表面における無界面スピントランジスタ構造の基本構造は完成したと言える。ゲート制御については、イオンゲートを用いたキャリア制御とそれに伴うスピン特性の変化に関する詳細を得るため、先行研究であるPt超薄膜におけるスピン流電流変換についてさらに実験を行い、新たな知見を得ることができ、現在論文投稿を準備中である。以上のように、研究目的の進捗はもちろん、それに付随する新たな成果を得ることもできているため、研究は概ね順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
一年目で得られた強磁性電極によるSTO表面の磁化制御技術を用いることで、STO表面でのスピン輸送・並びにスピントランジスタ動作の基本であるソースドレイン電極の磁化配置による電気抵抗の変化の観測を目指す。同時に、イオンゲート・バックゲートを用いたSTO表面へのキャリア誘起による磁性の発現を観測する。これにより、STO表面における磁性の発現を、強磁性電極からイオンゲートによるキャリア誘起に置換できる。最後に、キャリア誘起のSTO表面強磁性を用いたスピン輸送・スピントランジスタ動作を行うことで、無界面スピントランジスタ動作の実現を達成する。
|