2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of lubrication properties and low friction mechanism by solid lubricant aiming utilization at elevated temperature space
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19K15442
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 綾香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 産総研特別研究員 (90768912)
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Project Period (FY) |
2021-03-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙用潤滑 / 低摩擦 / 耐高温 / 摩擦メカニズム / 特殊環境摩擦試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙用潤滑剤として高真空特性に優れ、既存の宇宙用潤滑剤の代替となりうるWS2について調査しており、同環境では既存の宇宙用潤滑剤よりその優位性が確認できている。またWS2の潤滑メカニズムを解明するためには最表面をWS2のみで仕上げるコーティング手法が必要であり、当コーティング技術について共同研究を締結し開発を行っている。滑りやすい潤滑材料をバインダーや中間層を使用せず、熱処理も行わず基板にコーティングすのは困難であると考えられていたが、その成膜に成功し同サンプルのトライボロジー試験を始めている。基板との密着性を維持しつつ、最表面は潤滑としての機能を発揮できなければ低摩擦係数は実現できないが、現在まで行っている摩擦試験において、低摩擦係数を示し優れた潤滑特性を確認している。滑り材料が基板に密着するメカニズムは解明されていないが、その情報が極めて重要であり、その原理について微細TEM分析にて調査中である。実使用に向けたWS2被膜サンプルについては、宇宙用として実績がある手法に準じて試験サンプルを作成しており、地球軌道上の高温高真空環境における摩擦試験では、実用サンプル同等の低摩擦係数と長寿命が確認できている。300℃以上の高温高真空環境においては、既存の潤滑からWS2潤滑に置き換えるだけで、寿命長さを数倍伸ばせることを確認済みである。今後実使用を目指すにあたりその他の宇宙環境を模擬する必要があり、耐宇宙環境性についても評価を検討しているが、現時点では宇宙環境が要因とされる摩擦特性の低下は確認されていない。今後、実用宇宙環境試験を進めるにあたり、より多くの試験条件を設定して実験を進める必要がある。研究の円滑化を得るために大学内で運用可能な摩擦試験機も製作中であり、現在トライボロジー特性試験の試運転を開始しているが、真空状態や駆動機構ともに良好である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地球より太陽に近い側の惑星を調査するミッション計画が公的宇宙研究機関から公表されている。宇宙機は打ち上げ後のメンテナンスができない為に不具合発生を未然に防ぐ必要があり、故障が発生しやすい駆動機構部分の信頼性向上と高性能化は常に課題となり、その一助となる技術として潤滑表面処理トライボロジー技術がある。当研究では特殊宇宙環境における潤滑剤の選択肢を増やし、試験環境を整えることを目的としており、大学内に真空高温摩擦試験機の設置を目指している。概ね設計は完成し、部品の調達や組み立てを行い、試運転まで達成できている。宇宙環境を模擬した真空度は良好で、真空槽内部に組み入れた駆動装置も動作確認済みである。新型コロナウィルス蔓延の影響を受けて、設備の確認のため現場で作業できる回数が大幅に減らされたことで遅れが生じているが、サンプル加熱機構の設置を行うことで、当初目的としていた試験条件が実現できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
製作中の高温真空摩擦試験機の完成目指し、高真空摩擦試験の試運転から本実験へと移行する予定である。昇温装置設置後はサンプルを所定の惑星環境に対応した温度に調整可能かどうか確認し、高温状態で真空摩擦を行うことで目的としていた環境での潤滑特性評価ができる見込みである。また、同環境に曝された際の材料変化を利用し、潤滑剤の摩擦メカニズムにアプローチすべく各種分析を行っていく。当試験環境は高真空槽を利用していることから、供試体表面には摩擦および温度による影響のみ残すことが可能な為、分析サンプルを得るために適している。大学内に実験装置を得ることで、研究速度や効率化を上げることが可能になる。その為これらの試験と並行して、その他の模擬宇宙環境暴露試験を行ったサンプルの実験も随時行えるようになり、より実用化に向けたデータ収集が可能になる予定である。
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Causes of Carryover |
実験装置に関して移動制限等の影響で出張回数が減り、調達物に見送りが発生しているほか、参加を検討していた学会や研究会が相次いで中止・日程延期となっているため。
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