2019 Fiscal Year Research-status Report
LD直接励起レーザーを用いた高強度高周波テラヘルツ波発生とその応用
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19K15462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神田 夏輝 東京大学, 物性研究所, 助教 (60631778)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テラヘルツ・中赤外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
周波数が数十テラヘルツの高周波テラヘルツ波領域では、高強度光源を用いた高速な物性制御への応用が注目を集めており、位相安定な高強度光源が求められている。本研究では、近年利用可能となってきたレーザーダイオード直接励起の高安定なYbレーザーをベースとして、高い安定性と高繰返し性を活用しつつバンド幅の狭さを克服した、新たな高強度高周波テラヘルツ光源の実現を目指している。 当該年度には、まず高強度高周波テラヘルツ光の時間領域分光を行うために超短光パルスの圧縮方法を確立した。パルス幅255 fsのレーザーダイオード直接励起Yb:KGW再生増幅器の出力の一部を2段階のマルチプレートブロードニングと分散補償により11 fsまで圧縮した。非線形光学結晶GaSeによるパルス差周波発生により50 THzにまで及ぶ広帯域な高周波テラヘルツパルスの発生・検出を実現し、数時間にわたって積算可能な位相安定性を有していることを確認した。 さらに、高強度高周波テラヘルツ光源の実現に向けて要素技術として、光パラメトリック増幅過程のシグナル光としての増幅を高周波テラヘルツ領域で実証した。1段のパラメトリック増幅で100倍以上のパルスエネルギーの増幅が見られ、GaSe結晶への入射角により位相整合条件を制御することで17.5~43.6THzの間で周波数を選択できることを示した。本手法ではシード光にはパルス内差周波過程を用いているため、従来手法の2波長の2本のビームの差周波の場合に問題となる光路長揺らぎに起因する位相揺らぎが生じにくいという利点を持つ。さらに、この安定なシード光をシグナル光として増幅を行っているため、増幅後においても6時間にわたって揺らぎが44mradという非常に高い位相安定性を実現した。 当該年度の成果により、本研究で目標とする高強度高安定な高周波テラヘルツ光源の実現への道が開かれたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である高強度高安定な高周波テラヘルツ光源の実現のために、要素技術である光パラメトリック増幅を実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には光パラメトリック増幅により高周波テラヘルツ波の増幅に成功した。今後はこの増幅過程を詳細に調べることで高強度化への指針を得る。また、光パラメトリック増幅を複数段構築することで、さらに高強度な光源を実現する予定である。非線形結晶についても、GaSe結晶だけでなくLGS結晶など他の結晶も用いることで光パラメトリック増幅の周波数範囲をさらなる高周波へ拡張できると考えている。
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Causes of Carryover |
年度末に参加予定の国内会議が中止になり、交通費が不要となり使用予定額に誤差が生じた。繰越金額は次年度に計画している光源の高強度化に必要な光学素子の購入に充てる。
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Research Products
(12 results)