2019 Fiscal Year Research-status Report
七員環構造を鍵とする高歪化合物の創出と特異な構造に基づく応答機能
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19K15528
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石垣 侑祐 北海道大学, 理学研究院, 助教 (60776475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 構造有機化学 / 高歪化合物 / 酸化還元系 / 応答性分子 / ジカチオン / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に先立って,分子内コア-シェル構造を有する高歪化合物において,1.8オングストロームを超える炭素-炭素単結合を見出し,「超結合」という概念を新たに提案した。この高歪化合物に基づく超結合は,その極限状態ゆえに弱いエネルギーで伸縮することが明らかとなっており,この構造をモチーフとすることでどのような相互作用が結合長,あるいは分子軌道に影響を与えるのかを調査可能と期待される。また,七員環構造を持つ高歪化合物がもたらす特異な構造は,新たな機能創出を可能にすると考え,光/熱異性化に基づく酸化特性のオン/オフスイッチングの実現を二つ目の課題とした。2019年度はこれらの課題を推進したのでその概要を以下に示す。 まず,電子的特性が結合長へ与える影響を調査することとし,電子供与性の置換基を有する誘導体の合成に着手した。これまでにメトキシ基を有する誘導体の合成に成功し,得られた単結晶について構造解析を進めたところ,1.761(2)-1.795(3)オングストロームという結合長を明らかにし,弱い結合の伸長性を確認することができた。 また,第二の課題として設計・合成したアントラキノジメタン誘導体において,二種類の異性体を単離することができ,異性体間の酸化電位(HOMO準位)に差があることを明らかにした。加えて,光及び熱により定量的にスイッチング可能であり,一方の異性体が酸化されやすいことを利用して,適切な酸化剤を選択することで完全な選択的酸化が可能なことを見出した。特筆すべき点として,二種類の異性体が混合した状態であっても,一方のみを選択的にジカチオンへと酸化可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に提案した三つの研究課題のうち,光/熱異性化に基づく酸化特性のオン/オフスイッチングを実現できたことからおおむね順調に進展していると判断した。現在までに得られた成果を基に,より高度な制御性の実現に向けて研究を展開する。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目の課題である,「電子的特性が結合長へ与える影響の解明」に関して,電子供与基の導入方法は確立できたものの,電子求引基を有する場合は反応性の低下が顕著であり,合成を達成できていない。また,これまでの検討において置換基の配向による結合長への影響が少なからずあることが判明したため,回転による結晶中でのディスオーダーがないような置換基を選択することが重要である。これらの検討結果を基に,合成ルートの再構築を行い,検討を進める。 また,「酸化特性のオン/オフスイッチング」については,十分な成果が得られている一方,電位差や対応する酸化種の安定性に課題が残されている。これらの解決に向けて,中央の骨格の変調,あるいは電子供与性の置換基の導入など,さらなる調査を行う予定である。 具体的には,①DFT計算による分子設計,②合成し,X線結晶構造解析により構造決定,③外部刺激による応答挙動調査,④分子設計へフィードバック,の4つのサイクルを速やかに回すことで,革新的応答系の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、学会が中止になったことに加えて、年度末の実験計画がやや遅れたため。
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Research Products
(29 results)