2019 Fiscal Year Research-status Report
線虫の低温耐性を改善する不凍タンパク質の生体内作用機序の解明
Project/Area Number |
19K15787
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉持 昌弘 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (60805810)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 線虫 / 不凍タンパク質 / 低温耐性 / 細胞保護 / 熱ヒステリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
不凍タンパク質(Antifreeze Protein: AFP)は、氷結晶成長阻害というユニークな性質をもちます。様々な生物由来のAFPを線虫C.エレガンスに遺伝的に導入し、凍結環境におけるAFP作用を観察したところ、氷の成長阻害による細胞保護と著しい低温耐性の改善を見出すことができました。さらに興味深い結果として、氷の発生しない非凍結温度域でも低温耐性の改善が見られ、氷とAFPの作用ではない新たな機能が働いている可能性が出てきました。本課題では、この非凍結温度において低温耐性を引き起こすAFPの生体内作用に着目します。種々の変異AFPを発現する線虫の低温耐性を観察し、温度制御下におけるAFP細胞内局在パターンや細胞内作用を蛍光イメージングにより可視化解析し、非凍結温度における生体内AFP機能をAFPの結晶構造、物理特性の視点から明らかにしていきます。 本年度は、種々の変異AFPを発現する線虫を利用して、非凍結温度における線虫低温耐性と熱ヒステリシスの関係を見出すことができたました。また、AFP分子局在を観察するためのトランスジェニック系統が整備でき、当初の目標としていた計画を予定通り進めることができました。一方で、予定していた細胞膜流動性の評価系は分子発現量や線虫自家蛍光などの点から、観察が困難なこともわかりました。これを打開する方法として、光褪色後蛍光回復法(FRAP)による細胞膜観察を実施したところ、非常に有効な評価系であることが判明し、次年度の計画を遂行する上で有益な指針を得ることができました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非凍結温度における線虫の低温耐性と熱ヒステリシスの関係を見出すことができた点、AFP分子局在の観察系統が整備できた点など、目標としていた研究計画を予定通り進めることができました。その一方で、当初予定していた細胞膜流動性の評価系は分子発現量や線虫自家蛍光などの点から、観察が困難なことがわかりました。これを打開する方法として、光褪色後蛍光回復法(FRAP)による細胞膜観察が非常に有効な評価系であることも明らかとなり、これらを総合的に判断し、評価区分(2)としました。
|
Strategy for Future Research Activity |
AFP分子局在を観察できるトランスジェニック系統を利用して、(1)低温耐性観察、(2)AFP発現量の蛍光観察、(3)細胞の形態観察(低温による細胞破裂の有無を観察)、(4)AFP細胞内局在パターンの観察を同時並行的に実施していきます。さらに、FRAP観察も実施し、AFP変異のタイプによって、細胞膜の流動性が変わるかを検証します。これらのデータと熱ヒステリシスの関係を比較し、AFPの生体内機能が、AFP構造特異性に起因するものか特定します。以上の実験を通して、非凍結温度における個体動物の低温耐性行動を改善するAFP分子メカニズムを明らかにし、学術論文として発表します。
|
Research Products
(12 results)